第13話 皇居

 都民が脱出をしている頃、皇居のアメリカ軍と自衛隊が秘密裏を会合が行っていた。

 双方とも救援部隊ではなく海兵隊の司令官。自衛隊は陸将がすべて揃っていた。

 最初に自衛隊側から


 「脱出する都民は想定だと7割近くになる見込みで、残る市民に対しては関知しないと政府からの言質はもらっています。ですから最短で十日ほどで完了できるでしょう」


 「オーケイわかりました。我々もそれをベースに行動計画を進めていきます。まず横須賀基地のある神奈川から埼玉、千葉までの県境と東京湾を封鎖します。そして関東全域は合衆国の管轄として警察権も執行することでよろしかったのですね」


 「そうですね、おおむね了解です。政府は泥に埋まって絶望的な土地に国家予算を回せる余裕はまったくありませんから。コロナと五輪で浪費し回収が不可能なうえに東海地震で国債をこれ以上発行できないというか、買ってくれるあてが全く期待できない状況になりましたから。そのうえ北と南が侵略されている。日本国を名前だけでも残すために苦渋のことですが、アメリカさんに引き取ってもらうのが最善と判断したのです。ですから好きにしてかまいません」


 「そういってもらえるとやりやすいですね。こちらとしては1年以内に福島までを支配下に入れてもらうことが条件ですのでお得ではあるのです。

 計画段階ですが、廃炉作業をしている原発を丸ごと建屋で覆うことで安全な土地し、貯まっていた放射性廃棄物などは、東京の地下空間に泥と一緒に埋めてしまい、周辺に原発を10基ほど建て、無人となった都内のビルなどを爆破破壊し埋め立て、あらゆる工場を増やそうとおもっています。

 もちろん電気と製造されたものは日本などに売り利益をいただきますが」


 「有効に使ってくれるのあればありがたい話です。実は発表はしていないのですが、ロシアと中国とは水面下で話がついておりまして、北海道は独立国家として成立しロシアが友好国と言いますか属州として自由貿易ができることになりました。

 中国とは台湾紛争の決着がついていませんが、日本が尖閣諸島と竹島の放棄を決めましたので、奄美から南は中国の支配と了承したので、台湾がそれを知った時にどうするかですが。

 アメリカとしては台湾をどうするのですか」


 「ロシアの件はアメリカも裏では少し噛んでいるようで、詳しくはCIAの仕事ですが。台湾は自由貿易基地として両国が共同で支配することで進んでいます。先に仕掛けた中国ですが、あえてのタイミングで隙を用意しておいたのです。つまり最初から計画通りでした。

 どちらにせよ日本は自然災害でどうしようもないことになっているのですから、国際的な理由付けといいますか、紛争を手段として上手に使っただけです。実際に両軍に被害はでていないですから。とても平和的な紛争といいますか劇場型な自作自演でしたね。真実を公表してアカデミー賞でも狙いたいくらいですよ」


 「つまりすべての国にとって都合のいい落としどころということになりますか。

 日本は廃棄状態の土地を処分できて金もかからない。領土領海を減らすことで支出も減る。

 ロシアは北海道の食べ物などを得られ、天然ガスを売れるし道民は恩恵を得る。

 中国は共産党の命題を解決でき領海が韓国まで増えて海産物を得て、朝鮮半島も同時に支配できる。 

 アメリカは沖縄を捨てても関東一帯を基地とすることができ、訓練空域なども広くなる。

 中国とは表向き対立関係は続くが裏では同じ穴のムジナとしてアラブ産油国と共闘していける。

 なんで今まで実現できなかったのか。ある意味災害が重なって幸運だったことでしょうかね」


 「不幸を幸運にしてしまうことが人類の歴史ですよ。日本のことわざにあると聞きましたよ」


 「ああ、塞翁が馬のことでしょうか。まあ後になって思えばなくらいのものですがね」


 「今がうまくいっていればいいだけのことです。これからも日本にはうまくやってもらいたいと伝えておいてください」


 「わかりました。今の政権がどうなるかはわかりませんが、10月に選挙を予定していますので。

 被災地の代議士資格に有無やなんやら混乱するでしょうからどういった政府ができるか想像もつきませんからね。既存の利害忖度の全てが東京中心発信でしたから」


 「どうなろうとも我々の意向が無視されるとは考えていませんがね。さすがに政治家も馬鹿じゃないでしょう」


 「いやいや、日本の政治家を評価しすぎですよ。彼らは保身のためなら平気で国民を裏切ったり嘘を死ぬまで付き続けますまから」


 「まあそうなったらそうなったら裏連合国で粛清しますから」


 日本の未来を決める会合はこうして進んでいった。

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