第21話 これから
「これで……よかったのかな」
「また? もう今日だけで3回目だよ」
私のぼやきにメドリが答える。
結局、私達はこの前の会社に決めた。
連絡先にその意思を伝えて、今は返事待ち。
色々と怪しい部分はあるけど……給料もよかったし、雇用形態も調査をした量に応じてだから、生物駆除者をやってた時と変わらなさそう。それに……そこ以外で2人一緒にいれそうな仕事がなかった。
けど……怖い。メドリが傷つくのが怖い。
メドリが危険に晒されるのが怖い。
「だって……」
「怖いけど……私がイニアを守るから、イニアも私を守ってよ。それなら大丈夫でしょ?」
「そうだけど……」
メドリは私が守る。絶対守りたい。
けど……この前の大襲撃みたいなことになったら、メドリを守れない。守れる自信がない。
この前だって、魔物がたまたま攻撃してこなかったから良かったけど……
「それに……どんなことしても一緒にいてくれるんでしょ?」
不安そうな顔でメドリが言う。
メドリが私に確認するときはいつも不安そう。拒絶されるんじゃないかって思いが、溢れ出てる。私がメドリのことを拒絶するなんて、あるわけないのに。
「うん……私は一緒にいるよ。メドリが私のこと嫌っても……一緒にいるから」
不安そうな顔をして欲しくなくて、メドリを抱きしめる。
私がここにいるって伝えるために。一緒にいるって伝えるために。
「それなら……大丈夫だよ。どんなことがあっても一緒にいてくれるなら、魔物の危険ぐらい」
「うん……」
似たような会話をもうこの1週間で10回はした。
けど……不安になってしまう。
メドリから離れられない私が、魔物に遭遇しても戦えるの?
メドリを守りながら戦えるの?
不安……不安が心を染めていく。
その度に、メドリが私の心を晴らしてくれる。
「でも……どうしよっかな……」
次はメドリがぼやき始める。
「メドリの力だよね」
メドリが私を守る……一緒に危険な目にあっても、足手纏いにならないようにするために得ようとしてる力。
まずは戦力を得ようとしてた。
けどメドリは魔法の才能はなかったみたいで、魔力量も平均より少し低いぐらい。魔法適性もほとんどのエネルギーへの適性が低かった。
そんなのは学校の魔法試験でわかっていたこと。
魔導具とかへの魔力伝導率も調べてみた。
けどそれも、悪くはないけど、よくもないぐらいだった。魔導機が問題なく使えるならまだなんとかなるかもだけど。
「私もイニアみたいに戦えたらよかったんだけどね」
私も魔力多動症の影響でほとんどの魔法適性はないけど、身体強化魔法はギリギリ使えるレベルだったし、そこに膨大な魔力量を注ぎ込むことで、平均の数倍の身体強化魔法が使えた。
魔導機への魔力伝導率も悪いけど、膨大な魔力でなんとかしてる。精密な操作はできないけど。
「でも、メドリは魔力操作うまいよね」
「そう……かもだけど、こんなのうまくても意味ないよ……」
メドリが魔力関連で1番得意だったのは、魔力操作だった。昔から学校でも魔力操作を褒められてた記憶がある。
けど、メドリが得意なのは魔力を魔力のまま動かして時で、魔力を魔法にして別のエネルギーに変わると難しいみたい。
それでも、魔力を細い線にして指の周りに纏わせたりするのはすごいと思う。どうやって使うのかはわからないけど……
「やっぱり、私はこっちかな……」
「知識?」
「うん……戦えないならそういうとこで力になるしかないかなって」
というわけでメドリは魔物やいろんな街について勉強しているみたい。学校辞めたのに勉強している。私のために。私達のために。
「あとは……魔法理論かな。これで私でも使えそうな魔法とか作れれば……」
「魔力操作が関わってくるのがいいよね……能力付与系とか?」
メドリとうんうんと悩みながら話し合う。
こうやって話しているのはすごく楽しい。
いや、メドリといるだけで楽しいけど。
「でも能力付与も適正なかったし……魔力のままで、イニアに貢献できたらいいんだけど」
「それは……ちょっと難しそう」
魔力は所詮魔力。いろんなことができるけど、いろんなことをするには別のエネルギーに変えないといけない。
「そうだよね……うーん、やめた!」
「あはは……」
メドリがお手上げのように、大の字で床に転がる。
初仕事がいつになるかはわからないけど、そう焦っても仕方がない。焦ってもこけることの方が多いんだから。
それより、私が強くなれたら……メドリを守り切れるようになれたら……いい。けど、これ以上私にできることはないし……新しい魔導機でも買おうかな……
魔力発散機だけじゃ、魔力率の低い魔物には勝てないし……最悪素手で殴ってもいいけど、痛そうだし……
「イニア!」
「わっ……!」
そうやって考えていると、メドリが抱きついてくる。
紫髪が擦れてくすぐったい。
こうやって抱きかれるのも、抱きつくのもよくあるけど、まだ少しなれない。特に抱きつかれるのは。
メドリが私を包んでくれる。求めてくれる。
それがわかるから、少し恥ずかしい。
けど……それ以上に嬉しい。暖かさを、温もりを感じる。
「ど、どうしたの?」
「なんだかぎゅーってしたくなって」
かわいい。
私も抱きつく。
こうしてメドリを感じれるときは、感じているときは、すごく幸せ。いろんなことを忘れて、この瞬間を味わえる。
「そういえば……魔力は大丈夫なの?」
「うん……最近はもう気にならなくなってきたよ。メドリのおかげだね」
魔力の動きはもうほとんど気にならない。
いつのまにか不快感を感じることは少なっていた。
今は鎮静剤なしでも寝れる。
けど……魔力の動きは前よりひどくなっている。
今も意識するとわかる。ぐわんぐわんと動いてる。
前なら、動くこともできないぐらい。
そんなにひどい状態でも大丈夫なのはきっと、きっとメドリがいるから。メドリといるとなんだか安心して、魔力のことが少し気にならなくなる。
メドリと触れ合っていると、もうほとんど気にならない。
「なんか……ちょっと怖いよ……無理してないよね?」
またしてもメドリが不安そうな顔をしてしまう。
不安そうな顔も可愛いけど、やっぱりメドリには幸せでいて欲しい。安心していて欲しい。
「うん。全然大丈夫」
「ほんとに……? こんなに魔力動いてるのに……」
「わかるの? でも大丈夫だよ」
触れ合ってるし、魔力操作がうまいメドリなら私の魔力にも干渉できるのかな。
そう思うとちょっと、いやかなり恥ずかしい。
私の魔力はすごい汚い。量だけ多くて暴れて散らかってるから、それをメドリに……好きな人に見られるのは恥ずかしい。
「……顔赤いよ?」
「……だって、魔力見られるの恥ずかしいし……」
メドリはきょとんとしている。
あんまりピンときてないのかな。
「すごい魔力だしもっと自信持ってもいいのに……私は好きだよ。イニアの魔力」
「そうかな……?」
「ちょっと触ってもいい?」
「いい……けど……」
メドリが私の魔力に触れるのがわかる。
私の体内魔力とメドリの外部魔力が触れる。
メドリの魔力が、私の魔力をからかうように、なでるように、舐めるように、触れる。なんだか……触れ方が……
「んっ……!」
声が漏れてしまう。
身体に痺れが走ったみたいに、刺激が流れる。
これ……思ったより気持ちいい。
「ぁっ……!メドリっ……!」
「気持ちいいの?」
「ぅ……うん」
顔が真っ赤になってるのがわかる。
顔が熱い。全身が熱い。
けど、そんなこと気にならないぐらい気持ちいい。
メドリも楽しくなってきたのか、魔力を絡ませたり、包み込んだり、いろんな触れ方をしてくる。
思考が弱くなっていくのがわかる。
快楽が頭を占めてくる。
感覚が暴走してる。
「イニア……かわいい」
「ぇ……?」
「顔……とろけてるよ」
「そぅ……?」
思考が弱くなってるのがわかる。
新たな刺激が強すぎて、何も考えられない。
メドリともっと触れ合いたい。
メドリをもっと感じたい。
メドリがもっと……欲しい。
「キス……キスして……」
「え!? ……もう……」
恥ずかしそうなメドリの顔が近づいてくる。
メドリの口と口がつながる。
舌の感触が絡み合う。
くちょ……ちゅ……じゅぱ……くちゅ……
音が頭を侵していく。
いつもの耳を食べられているときとも違う。
唾液と唾液が混ざり合ってるのがわかる。
糸を引いてメドリが離れていく。
「メドリ……もっとぉ……」
「うん……」
メドリがもっと欲しい。
メドリをもっと感じたい。
メドリにもっと感じて欲しい。
いつも私の耳を食べていた口を、私が舐め回す。
それと同時に魔力が絡み合う。
「んっ……!」
気持ち良さが頭を襲う。
快楽が私の思考を覆い尽くす。
思考がどんどん弱くなっていく。
幸せに包まれている気がする。
もう意識が保てない。
メドリ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます