先輩。

柵夜道

理解

ある日の夕方、私は先輩に出会った。あの頃の先輩に私は、出会って数日とは思えないほど親しく、なんでも話せる、数年来の親友のような心地を感じていた。

「先輩は今日も一段と御美しい、素敵な先輩の隣にいる俺は、きっと沢山の人々から、消えてしまえと願われることでしょう」「先輩、貴方の魅力はきっと人知の及ばない、深い空のような色をしているんだ」「先輩、今日も先輩の見たであろう世界は、俺が見た世界の何倍も煌めいていたに違いありません」先輩、先輩、先輩。

先輩は、私に名を名乗ったことがない、私の名前は一方的に教えてしまったのだから、今更知りたいという思いも無い、知ったところで、私にとって、先輩は先輩でしかないのだから。

世界一静かな瞳の、私の先輩なのだから。

ある日先輩は、生きているような顔で、踊っているような声で、ご友人の話をしてくださった。私は、俺は、なんなのだと、今まで見ていた美しさは、無機質で整った美しさは、俺の知っている先輩は、生きてなどいなかった。

私は悟ってしまった

「俺は、先輩の隣どころか、人生にすら存在できていなかったのだ」と。

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先輩。 柵夜道 @sakuyomiti

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