第3話

帰りのホームルームが終わり席を立つと金田から「また後で」とだけ言われそそくさと階段を駆け下りて家路についた。とはいっても急いでいる訳ではない、金田に言われた集合時間の17時にはかなりの余裕があったし、用事があるわけでもない。ただ学校初日に友達づくりを盛大に失敗した僕には仲が良いと言える人がいないからだ。なんなら今日転校した金田が一番仲のいい人と言えるかもしれない。きっとクラスの連中もなんで俺が金田と仲良くしてるのかと疑問におもってることだろう。


学校から大体30分くらい、自転車通いの僕は近いのか遠いのか微妙な距離を軽く汗をかきながら家に着いた。先に姉が帰っていたようでお弁当のお礼を照れながらも伝えてから自分の部屋へ足速と向かった。

姉は気味の悪そうな顔をしながら僕を見ていたけど照れていたのだろう、口元が心なしか緩んでいたきがする。

集合時間30分前、汗を流すために軽くシャワーを浴びて服を選ぶ。着る服は何が良いのだろうか、学校の制服?私服でも良いのかな、いやでも、、、という感じで一人悩んでいるとピロンという音がスマホから聞こえた。メールのようだ。


『家の前に着いたよ。準備が終わったら来てね、急がなくても大丈夫だから』


ちょうどいい聞いてみようか。メールを送るとすぐに反応があった。


『服は私服で大丈夫。あまり派手な格好はダメだけどね、そういうのが苦手な人がいるんだ』


派手なのがダメ、か幸い派手な服は持ち合わせていないため心配はないんだが、金田は派手の部類には入らないのか?

一応注意しながら着替え、小さめのバッグを下げる。待たせるのも悪いと、少し急ぎめに歩いた。


「あ、凛くん来たね。それじゃあ行こうか。」

ロードバイクにまたがっている金田が言った。

私服も爽やかだな

「うん。待たせてごめんね。」

僕も家の駐輪場からママチャリを引っ張り出してまたがりながら言う。

金田は気にしないで、と言うと足を動かした。


家から10分ほどしてあまり見ない街並みになってきたころ、それはあった。

橘探偵事務所——そう書いてある僕の見学先は僕が想像するような大きいものではなく、地味というか寂れている古いアパートにあった。

思わず「え」と声に出してしまいそうになる。それなりに大きい依頼がここに来るものなのか。

「あはは、古いでしょ。でもみんないい人たちだし、居心地もいいんだ。心配いらないよ」

僕の顔をみて察したのか苦笑いをしながら言う。心配はしてないけど、うーん。。

「あら。その子がさっきメールで言ってた子?」

透き通る声に振り向くと黒髪ショートの美しい女性がいた。白い半袖Tシャツにオレンジのハーフパンツを来ていて、身長170cmの僕より少し小さいくらいだから167cmくらいだろうか。

そんな彼女に僕は見惚れていた。目を離せなかった。僕はどんな顔をしてるだろう、赤くなっていないかなニヤけたりしていないかな。心配だ。

こんなこと始めてでこれが一目惚れというものなのか、それとも何かの病気なのか、どちらにせよ僕の胸の鼓動は早まるばかり。


「はじめまして、橘舞姫たちばなまきです。よろしくね、」

太陽のような笑顔に僕は追い討ちをかけられた。

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