第10話 そう思っていた
「おはよう、白姉」
「おはよう仆釉」
そう言い、椅子に座り事前に準備をしてくれていた朝食に手を付ける。
今日から普通に生徒として授業を受ける。
初日だし遅れずにいこう。
その時はそう思っていた。
(ええええええええええ!)
というわけで俺は現在誘拐されています。
ちゃんとイメージ通りに廃ビルのようなところに椅子に座っており縄らしきもので身動きを封じられている。
さっき起きたらこうなっていたんだけどね。
しかし俺を誘拐する必要があるのか?
あちら側のことを知っているような人じゃないと俺を誘拐する必要がない‥‥‥いやあちら側のこととか関係なかったわ。
だって姉兄弟仲がいいことなんて世間にも知られていることだし、身代金目的の誘拐だわ、きっと。
「おやおや、目が冷めましたか」
物陰から出てきたのは執事の格好をした老人だった。
「お前は何者だ?」
口をガムテープで封じることをしなかったため話せる。
つまり情報なのか?
でも俺から聞き出せる情報なんて限られてくる。
そうかもと考えていたがこの老人は普通ではないと感じた。
「私はただの老人ですよ」
そう言いホホホっと朗らかに笑う。
明らかに普通ではないな。
「私の目的はずばりあなたこそ何者なのか聞きに来てるだけですよ」
「いやありえないな」
否定する。この老人の目的を。
それなら誘拐する必要がない。
今の俺ならあちら側の情報がほしいから情報交換ということで言うのに。
「よく、私の目的が他のものだと気づきましたね」
老人はニヤっと笑みを浮かべる。
正直腹の中がわからないから気持ち悪い。
「お金ですよお金」
やはりそうきたか。
「なるほど、姉貴のところにもうなにか送ったのか?」
「いえ、まだ」
老人はさらにニヤッと超絶気持ち悪い顔をしてこう言う。
「だって一度あなたを従順な奴隷にしてからの方がいいでしょう」
そして老人の後ろから不良がぞろぞろと襲ってくる。
えー、困ったなー
棒読みで思うが縛られて動けないので一方的になると思っている。
実際自分自身でわかっていたはずなのだが‥‥‥。
『さて、動こうか』
そうまた聞こえると体中の細胞が一つ一つ熱くなったように感じれる。
なら倒すか。
そう思った矢先、
「正義のヒーローここにて登場!!」
そう大声で聞こえたので一同が振り向くと鉄の鎧を全身に纏い、片手には大剣を持った人?がいた。
ファンタジーによくある騎士にしか見えない。
「とぉ!」
騎士は降りてくる。
そういえばもともと騎士がいた場所は屋根が一部崩壊しているところの上にいたのだ。
騎士は降りてくると大剣を一振りすると不良の大部分が吹き飛んでいき、壁にぶつかりショックで気絶する。
「少年はただ待っているだけでいい」
わぁ、なんというイケメンだな。
騎士は不良が総領が倒されたのか混乱していることをいいことに老人に攻撃を仕掛ける。
なんだろ、この寂しさは?
俺はふと気づく。
(もしかして俺はただ誘拐されただけでなにもしていないのでは?)
なら俺も行動をしないといけないな。
姉と兄より劣っていると親から判断され追い出されたので学園に転入したらハッピーになりました。 隴前 @rousama
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