第2話 走馬灯が巡る。


仆釉ふゆ、信じてるぞ』


信じられて応えたいと思い必死に頑張った。

しかし結果は努力なんてものでは才能を上回らない。


『まただ!!!』


ドンッ!!


俺は殴られる。

痛くない。これがいつもなのだから。

姉、兄は才能を持っていた。

それはなにか一つに興味を示してやり込んでいくと他のこともいい結果になるのだ。

しかし自分はなにかをやり込んだことなんてない。

だから当たり前だ。


走馬灯が巡る。

けれども生きたい自分がいた。

そうか、俺は姉、兄みたいになにかにハマりたいのだ。

それが俺が今生きる理由なのだ。







俺は再びフラつきながら足が痛くても走る。


あと7m


しかし現実は残酷だ。

鎌が迫ってきていた。



「迷い人発見!!」


確かにそう聞こえたが必死なにで幻聴に聞こえた。

俺の頬のすれすれのところに高速ななにかが通る。

青い閃光が。



鎌は、カマキリからの攻撃は受けなかった。


「え?」


気になり後ろを振り向くと俺の体の2倍はある青い槍がカマキリの頭に刺さってそのまま後ろにあった家の残骸に突き刺さっている。

その光景に足を止めてしまう。

そのまま俺は気が抜けて地面に座り込んだ。



足はまだヒリヒリとしているため動けそうにない。

カマキリが死んでいるところは全くグロくはない。


「大丈夫ですか?」


座り込んだ俺の視界に入るために中腰になった美少女がいた。

その美少女はつややかな髪で発育はとてもよい。

俺は初めて見た。こんな現実を。


「あ、あ」


返そうとしてもこんなにも素晴らしい現実を見て混乱してしまっている。


「混乱するもの仕方ないですね、迷い人なんですもんね」


美少女はそう言いつつカマキリの方に向かいカマキリから槍を引き抜くと槍を持ったままこちらに再度戻ってくる。

槍から無透明の液体が地面にポタポタと垂れている。


(カマキリの血か‥‥‥ってもう冷静になっているな)


「ありがとうございます」


俺はなんとか立ち上がりお礼をする。

美少女は一瞬驚くが元の無表情に戻す。


「そうですか、しかしどうやってこちら側から来ましたか?」


俺の読みが正しいならこの人は俺みたいに迷い人と呼ばれる人を助けることをしているんだろう。


「それが、実は散歩をしていたら突如として落ちたんですよ」

「落ちた?」

「はい、落ちました、二回落ちたらこの住宅街に来ていました」

「なぜこの時間に散歩していたか気になりますが、情報提供ありがとうございます、この家に入るともといたところに帰れますが、このことを話さないこと」


「はい」


俺は返事をして家に入ろうとする。

美少女がいた方に振り返るともう姿は見えなくなっていた。きっと次のところに行ったのだろう。


(人には好奇心というものが存在するから話してしまったら来ようとするからそれを防ぐためか)


一人で納得して家の中に入ると閃光が放っていた。

しかも外には漏れていないことに疑問に思うが視力が奪われたかと思うほどで明るすぎる光しか見えない。


そして視界は落下しているかのように逆になる。

ある程度時間が経つと暗転した。


「は」


目を開けるとそこは姉の家の前だった。

俺はちゃんと生きているのか自分の腕をつねる。


「痛い」


そして家のチャイムを鳴らす。

数秒をドタバタと聞こえる。


「誰ですk‥‥‥仆釉!!!!」

「ちょ、はく姉」


白姉は抱きついてくる。

これでやっとこちら側に帰ってきた気にもなったな。










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