きヴ

エリー.ファー

きヴ

 最初から話さなければこの問題は解決しないだろう。

 まず、一人の男が部屋へと入った。中から扉を閉める。外から四回ノック。打合せ通り、中から四回ノックをさせる。次に二回ノックをしてから一時間ほど待つ。そして、扉を開ける。

 中には誰もいない。男の姿はない。

 この部屋には何か問題がある。そのことは分かるのだが、どうにも解決の糸口が見つからない。

 四回のノックを部屋の内と外で行って、次に外から二回ノックをして一時間ほど待ってから扉を開けると中にいた人が消える。消えるまでの条件を幾つか変更すると人が消えないことから、何か意味があると考えられる。

 しかし、分からない。

 研究は前進しないまま、六年経過した。


 研究のことなど、誰も知らない。

 嘘をついていては、何も分からないままである。


 研究を放置してしまった。

 多くの犠牲者が生まれた。


 研究途中に起きたすべてのことは、死海を生み出すに至った。


 研究の結果、地球が滅んだことは報告できるものではない。


 幾つかの研究は、人々の心に影を落とすこととなった。

 それは、一生に一度のイベントとして語り継がれるべきことだと考えられるからである。

 必死に生きてきた人間の命がはかなく散る。このことについて上層部はどう思っているというのだろうか。


 研究の落ち度について語る必要がある。

 しかし、そのための機会を得られなかった。

 私たちは多くの問題を解決できないまま死ぬことになるだろう。


 研究者はやる気を失っており、他の研究機関への転職を考えている。まるで、自分たちが思っているよりも、高速で世界が移り変わっていくのに、耐えることができていないかのようである。

 私は、これらの問題を解決するための手立てを考えている最中である。


 研究を進めなさい。

 これは命令である。

 研究を進めなさい。

 これは命令である。


 研究員の中に裏切り者がいる。

 勇気のある者だと思った。


 研究に真実はない。


 研究はたーくんに任せることにした。

 たーくんはかなり有能である。


「すみません。この落書きは一体」

「あぁ、研究がどうとか、いろんなことが書かれてる、この沢山ある落書きのことか」

「はい。最近、書かれたものみたいですけど」

「実はな。この研究所は二十年前に閉鎖されてるんだよ」

「でも、このあたりに落書きって、インクとか塗料を見てもつい最近書かれたような感じですけど」

「な、そうなんだよ。誰かが忍び込んで書いてるのかもな」

「何の目的でそんなことをしてるんですか」

「さあな。でも、もしかしたら誰も忍び込んでないのかもしれないな。昔、ここで研究をしていた研究者の怨念が、何か悪さをしているのかもしれない」

「やめてくださいよ」

「あはは。でも、分からないだろう。だって、あんなことがあった研究所だからな」

「その、昔あったことについて、知らないんですけど」

「知らないままがいいよ。ただ落書きを消して、ここから去る。それだけでいい」

「まぁ、時給はめっちゃいいですし、文句はないですけど」

「じゃあ、いいだろ」

「でも、めっちゃ気になるんですけど」

「気になるか」

「えぇ、まぁ」

「俺と一緒に死ぬまでここで働きたいか」

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きヴ エリー.ファー @eri-far-

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