第35話

隠しヒロイン夏海視点です。……



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私は今寝ている達平君を見つめていた。

一応だが私と彼は姉弟だ。本当は家族だけではなくて異性として彼に意識して貰いたいけど……… 私は彼を見つめてふと思い出にふけた。彼と出会って私が彼を好きになったあの日の事を…………



私は2007年に『紅石夏海』として生を受けた。私が小学生になった頃何故か分からないけど学校の皆が私をいじめてきた。下駄箱にカエルを入れられたり、ときには『小学生の男の子に手を出した変態』そんなデタラメな噂をされたりもした。でもそんな時に私を助けてくれた人が居たのだ。 

その人は「多田平達平」私が好きになった男の子だ。彼は私がイジメられていることに気付くとすぐ「大丈夫?」と声を掛けてくれた。今まではいじめを受けていても無視されていたからとても嬉しかった。

その日から私は彼に会いたいという一心で学校に通うようになった。私は学校へ着くとまず最初に彼の机へと向かう。

そんな私は今でも連絡を取り合う友人から見ると恋する乙女だったらしい。 私は彼と一緒に授業を受けられて幸せだった。いじめも少しは耐えられるようになった。けど、その幸せは近いうちに崩れ落ちてしまうの。……


ある日私はお母さんに呼ばれた。お母さんが言うには引っ越しをするらしい。それを聞いた直後私は本能的に『嫌だ!!』とお母さんに怒鳴っていた。彼と離れ離れになるなんて信じられない。

もう私は彼に酷く言うと『依存』してしまっている。 彼と離れ離れになったらもう私はどう生きていけば良いのだろう? 

けど引っ越すっていうことはいじめを受けなくなるのかな? そんな考えが私の頭の中に湧いた。彼と離れていじめを受けなくなるか、それとも彼と一緒にいていじめを我慢するか…… それを決断出来ればどれほど良かったのだろうか。私はお母さんになにも言えずに引っ越した。



それから約3年が経ち私は高校生になった。高校生になってすぐお母さんが再婚した。

入学初日に新しく家族になる人に会いに行く。

私は通う事になった中等滝宮学園の入学式を終えて新しい家へと向かっていった。私が家へと着いたとき、なんだか既視感を感じた。嗅いだことのある匂い、見たことのある靴、全てが私の記憶を鮮明に辿っていった。

「もしかしたら」そんな思いが私の頭によぎる。けどすぐ私はその思いを切り捨てた。そんな運命的な事あるわけ無いのだ。それもとても運が良くなければ…… 

けど私は起こした。運命とも呼べる奇跡を……… 私がリビングへと向かうと彼が居た。私は彼と再開した時泣いていた。やっと会えた。そう思った。けど彼、達平君は私が彼が助けた紅石夏海とは分かっていないみたいだった。再婚して天原に名字が変わったから知らないのも分かる。だから私は今はまだこのままでいいとそう思った。………


お兄ちゃんと出会ったときを思い出して私は本気で行かないとだめだとそう思った。

達平君は色んな人から好かれている。その例が花音さんや未来さんだ。その二人はお兄ちゃんを一時期引きこもりまで追い込んだ。それは絶対に許さない…… だからこそ私のこの気持ちは、好きの気持ちは抑え込まなきゃいけない。そうさっきまでは思っていた。

けど彼と出会った時のことを思い出して私は「負けたくない」そう思った。花音さんや未来さんは美人だから私では勝てないかもしれないけど、私は弱いなりに身の回りにあるものすべてを使って彼を振り向かせて見せる。

そう彼の寝顔を見ながら私は決意した。……



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