第41話〜春のそよ風に吹かれて

「炎華、俺はお前のおかげでここまで来れたよ

…ありがとう」


あの日から俺はずっと炎華に会っていない。また会えるといいな…って、そんな甘い考え通用するわけ…実際に彼女が死んだ場面とか見てないし、通用するよな。

今は稲岡高校の入学式で狭間さんと瀬山と一緒にいる。2人ともスマホで自撮りばっかして俺もそれに巻き込まれてる。


「その宇宙人みたいなやつどうなってんの?」


俺は狭間のスマホを覗いた。色々なアイコンがあり、その中には個性的なアイコンもある。なんか人間の顔に適しちゃいけないようなアイコンもある。

そして瀬山は俺の肩を叩き、その振り向いた姿をスマホで撮った。


「はぁ〜?アンタはフィルター知らないのぉ〜?よしっ!変顔頂き!」

「あっ!テメェ瀬山!俺の顔を勝手に撮るんじゃねぇよ!マジで性格悪いなっ!」

「ブヒヒっ!この1枚で飴岩の人生を終わらせる事が出来るのよぉ?」

「こいつめぇ…!」


瀬山にカメラを向けられて写真を取られてしまった。なんという不覚!瀬山の近くに行った狭間はきょとんとした。うわぁ…こんな反応だしきっと微妙な変顔なんだろうな。

それが1番キツいわ。


「瀬山さん可愛く撮ってるね、それ私にもちょうだい。高田くんにも送るから」

「は、はぁ?アンタやっぱり目が発光してんじゃないの?」

「…うわ、マジじゃねぇか。てかフィルター的なやつ付けてないんだな」


そこには風に髪を左に流されている俺がいた、なにも加工もされていない状態で撮ってもつまらない。それよりもっとバンバン加工して欲しかったなぁ。


「飴岩くんって顔は良いよね。そう思わない?瀬山さん。」

「それは…まぁ…うん、認めるけどさぁ」

「圧倒的に!性格が!ダッメダメ!」

「そんな大声で言うなよな…おれ、褒められてんのかどうか分かんなくなるわ」


顔は良い…顔だけは良いって、それ以外はダメって…それって典型的なダメ人間じゃね?


「ひっでえなぁ…」

「まぁまぁ。それよりもうすぐ式が始まるよ。これからもよろしくね2人とも」

「ほら、さっさと行くわよ。まぁ、クラスは一緒にならないとは思うけどよろしく」

「そうだな…高校生活を思う存分楽しむ!2人ともよろしくな」


やっと新しい自分と新しい生活を手に入れた。俺は炎華の花びらをUVレジンで固めたペンダントを握りしめた。



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