第40話〜SARI=??
「…と、僕がお話するのはここまでです、長い間お疲れ様です」
SARIは話し終わるとすぐにいつものだるそうな顔になった。周りは泣いて感動しているが、彼にとってそんな事はどうでもよい。
「いやぁ〜ねっ、もう僕はもう…泣いちゃいましたよ。その男の子っていうかね、そのぉーなんて言いますか。話が本当に救いがないと言いますか」
「ちょっと俺は信じられないすっね、すずっ。まずこんな事を言っちゃ怖い話は全部話の腰が折れますけど、やっぱり有り得へんですわ。てかこれは花粉症ですから!別に泣いてるわけちゃいますから」
司会者と関西出身のお笑い芸人が涙を流しながら話している。両者ともSARIの話をあまり信用してはいないようだった。あくまで、創作の話だと思っているようだった。
「信じようが信じなかろうが、どっちでもいいです」
「それって「信じるか信じないかはあなた次第」ってやつですかぁ?」
知能もなさそうな女子高生タレントが彼に聞いても、無視されるだけだった。
「この話ってどこから聞いたんですか?」
「さぁ、どっからでしょうね」
SARIはあからさまにこの番組、この出演者達に興味がなくなっているようだった。
「もう…なんといったらいいか…わたし、こういうのっ、本当にっダメで…」
「そうですか、怖い話で感動して泣くんですね。そりゃ凄い」
また、このアナウンサーはネット上では涙脆いで認識されており鼻水をすすりながら泣いていた。そんな彼女を冷たい目でSARIは見る。なぜこんなにまで出演者に冷たいのに彼らにこんな話をしたのか。
「はい、収録お疲れ様です」
そして収録は終わる。SARIはすぐに楽屋に戻ろうと廊下に出た。歩いていると後ろから走る音が聞こえて誰かに呼ばれた。
「あ、あの!」
「何ですか、何か用でも?」
まだ若い入りたてのスタッフで顔を真っ赤に汗を垂らしながら彼に話しかけた。
「この後ってどうなったんですか?私、凄く気になってて」
「…あー、そういうことね。貴女は信じるって事ですか」
「は、はい!」
元気よく挨拶したスタッフは息切れしている。SARIはこの話の結末を誰にも話した事がなかった。
「なら話しますよ、最後まで。この話を信じるなんてだなんて…貴女も変わってますね」
「は、はぁ」
若いスタッフは有名な歌手であるSARIの性格はひねくれているとネットニュースの記事で読んだことがあるが、まさかこれ程ひねくれているとは思わなかった。
「あの話の馬鹿な男の子は、俺です。飴岩泉水はSARIの本名。話の途中で分かってると思いますけどね」
「それで…この話は俺が14ぐらいの時の実体験でもう14年も前の事なんです。こんなに年数が経つと、あの子の匂いもあの子の声も全て忘れてしまう…だからテレビで話したら誰かが記事にしてまとめる。
そうしたらまた、あの子に関する情報が今まで以上に手に入るかもしれない。そうしたらもっとあの子を覚えていられるかもしれない。そう考えたんですよ」
「じゃ、じゃああの話の続きはどうなったんですか?その話もあの場で話すべきでは?」
「あれ以上話せばきっと…叩かれますよ。そんな話は嘘だってね」
SARIはずっとペンダントを握っていた。
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