第39話〜その感触を忘れるな
俺は彼女を自分の体から離した。しかし、炎華との距離は30センチぐらいしか変わっていない。
死んだら治るとかさ、死期を悟ってるけどさお前は本当は生きたいって、思ってるんだろ。
だって死にたいやつはこんな惨めな俺を抱きしめたりしないもんな。俺の寿命を分けれたら…なんてバカみたいな事を思いついたよ。
「なぁ、死なないでくれよ。俺、炎華がいなかったらこの1年生きてなかったかもしれねぇんだぞ…精神病になってたかもしんねぇんだ。」
「炎華だって…!生きたいんだよ…!泉水ちゃんと…遊びたいし楽しいこと、毎日沢山したい!」
「俺だって…ほ、炎華、花が…」
彼女の左目の花びらが1枚、剥がれた。それと同時に彼女を支えている手に体温の温かさがなくなっていく。顔もなんだか青白い。
「あれ…なんだか…はやい。」
「しっかりしろよ!いまはまだ春じゃねぇぞ!せめて春まではもってくれよ…!なぁ?!」
「ふふ、ねぇ…最期に…」
「最期にとか言うなよ!やだよ俺…目の前で好きな人が死ぬなんて見たかねぇよ…。」
彼女の冷たい手が俺の頬を触る。乾燥気味で枯れかけているような、そんな手だった。少なくとも生気は感じられない。そしてゆっくりと迫り来る顔。
「炎華なんだっ、」
「…つぼみの感触なんだね、キスって。」
「へっ…?」
なんだ、今の。キス…キス?!な、なんで死にかけてる状況でキスなんだ?!
「炎華、してみたかったの。」
「そんなの…いくらでも…」
「炎華が生きていれば、ね?もう時間、みたいさようなら。」
やめろやめろ!そんなこと言うな!クソ、眠気が…!耐えろ耐えろ!飴岩泉水、俺は好きな子1人も見守れねぇの、か…
「夢、応援してるよ。」
そこで俺は泣きながら目が覚めた。俺はパニックになって、過呼吸を起こしていた。
「はぁ…はぁ…!」
俺は体を起こして、立ち上がろうとすると布団の中から1枚の花びらが出てきた。黄色い、まだ綺麗な花びら。すぐに俺はこれがなんだったのか、そしてこの花びらのおかげでアレが夢ではない事が再確認出来た。
「炎華…!炎華…!」
ここから何十年たっても彼女は俺の前に現れなかった。
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