第38話〜日差し
炎華は泣きながら言った。ポロポロとその綺麗な金色の目から落ちる粒はぶどう程大きかった。
「ねぇ…ねぇ…泉水ちゃん。こっちにもっと来て。ほの、炎華ね、炎華…」
見てられなかった。もう助からないだなんて誰が思うか、なんで炎華が死ななくちゃならないんだ。俺は彼女を弱い力で抱きしめた。
「ごめん…ごめん…俺なんも出来なくて」
「いいの…泉水ちゃんの問題じゃないから。人の温もりって暖かいんだね。初めて知った…」
「もっと、抱きしめて」
炎華は俺の脇の下に手をいれてグッと力を入れて抱きしめた。俺の胸の中に炎華の頭がすっぽりと入っている。彼女の花の良い匂いがする。そして俺もそれに答えるように力を込めた。
「痛くないのか?」
「痛いよ…すっごくね。でも、やってみたかったの、安心する…」
「そうか…」
それからは全く喋らなかった。時々、死んでるんじゃないかとヒヤヒヤしたがただボーッとしているだけだった。涙はもうなくなっていたが少し目が赤かった。
「なぁ、本当に…治らないのか」
「うん…死ぬまで治らない」
「やっと、やっと謝って仲直り出来て、受験だって終わったのに!なんで、こんなのって…あんまりだ」
「泣いてるの?炎華のせいで」
「ちげぇよ…お前のせいじゃないってばか」
俺は涙が止まらなくなった、小さい子みたいに泣きじゃくった。また抱きしめる手が強くなった。離せば、すぐにどっかに行きそうだから。離したくなかった。
「俺、お前の事、炎華の事が好きなんだ。ここまで人を好きってなったのはお前が最後だと思うんだ…だから、」
「それ以上言っちゃだめ。炎華と泉水ちゃんの気持ちは一緒、でもアナタには未来がある。わたしには過去しかないの」
「そんなの関係ない!俺はずっと炎華を!」
「ずっと居たいよ…ずっと笑ってたいよ…でもそれは絶対に無理な事なの。だからっ…はぁ…」
「炎華!!」
彼女は突然苦しみだした。彼女は我慢していたのだ、自分の身体に縛るツタがめり込む事を。俺はただ彼女をみているしかなかった。
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