第37話〜遅いだけじゃない
「でな!その時に瀬山って奴がな?「アタシノモトカレ10ニンナノヨォ」なんて言うもんだからさ、俺笑い転げて隣のおっさんとぶつかったんだよ。
そのおっさん、瀬山のお父さんでアイツ元彼の事隅々まで聞かれてんの」
「あはは!セヤマ可哀想!」
「んで元彼なんていないって白状して、瀬山のお父さんめちゃくちゃ安心してたぜ」
「いないのに嘘つくんだ…すごいね」
「だろ!?」
炎華は今まで以上の笑顔で俺の話を聞いてくれた、やっぱり彼女は可愛いなぁ。
「いたっ…!」
突然、炎華は痛がった。今まで幸せそうな顔とは一転して深刻そうな表情を浮かべた。
「ど、どうした?どっか怪我してんのか?」
「泉水ちゃん。泉水ちゃんに聞いて欲しい事があるの」
彼女の左目の見事に咲いている花が揺れた、いきなり真剣になるからドキッとした。なぜか炎華が目から離れない、ずっと見ていないと、ひゅっと何処か行きそうだ。
「あのね炎華と約束して欲しいの…今年の春に炎華の
骨壷…?炎華の…?待ってくれよ、それじゃあ炎華が、炎華が、
「何言ってるんだよ…その時には治るって言ってたじゃないか!炎華の病気はそもそも人間の肉とか血とか食べれば治るって…」
「死ねば治るよ、だって骨しか残らないんだもの、病気にかかったこの肉体は燃え尽きてしまうしね。あとね、泉水ちゃんは勘違いしてるよ」
死ねば治るって…体は残らないならそれは病気が治ったって言えるのか。そんなの嘘だ、そうだ!俺の血をあげれば…!
「俺の血は?5リットルでも10リットルでも抜いて飲めば…」
「そんなに抜いたら泉水ちゃんが死んじゃうよ。血肉を食べてもこの病気の進行を止めるだけで、治らないの」
じゃあ炎華は、
「だから炎華は今年の春で死ぬの。この体を見てよ、このツタにがんじがらめになった情けない姿を」
彼女は首元を隠していたがそれを露わにした。そして布団をできる限りの力で引っ張り、自身の体の状態を見せた。足や腕は棘の生えたツタで巻かれておりそのトゲは、炎華の柔肌に刺さっている。
「だから痛そうにしていたんだな」
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