第36話〜もう一度だけ

もう冬休みだ。時の流れは早いなぁ、小学生の時とは時間の感じ方が違うみたいだ。冬休みに突入しても年が明けても、まだ合格発表は出ていない。


「布団あったけぇ…湯たんぽ最高だなぁ。暖房あったけぇ…ふわぁ…」


そんなにガチガチの緊張したままずっと待つのは俺らしくない。こうやってゆったりとマイペースにやっていくのが俺流…あー、イキってたら眠たくなった。


「まだ…スマホで見たいのが…」


今はサブスクで映画を見ていた。題名は「天使と悪魔の算術」で、中々面白いけど用語が難しいんだよなぁ…なんか…それはぁ…


俺は眠った。


「起きてよ、起きて」


意識が段々と戻ってくると懐かしい匂いがする。そして床の冷たさに驚いて飛び跳ねるように起きた。


「うぇあっ!!つめってぇ!」

「元気みたい」


部屋は変わらない。白い壁紙に白いベットや本棚があるだけで何も変わりゃしない。うおー、久しぶりに来たなぁ。


「あっ…炎華…」


そうだ、ここに来れたらやることがあるよな。俺は床に膝を着いて両手をいい位置に置いて綺麗な土下座をした。


「ごめん!炎華!絶対に許されないって分かってる。あんな根も葉もない酷いこと言ってごめんな!」

「…何、それ」


俺は顔を上げた。すると炎華はゆっくりとこちら側に体を寄せて笑った。


「あはは、怒ってないよ。確かに炎華も説明不足だったよね、ごめん、ごめんね」


やはり天使か、にっこりと笑うその顔は本当に綺麗だ。だが首元を隠しているのは何故だろう?


「よかった…ところでなんで首を隠しているんだ?何か出来物でも出来たのか?」

「そんなところ。ねぇ、最近はどうだった?」


はぐらかされた気がするが…まあ良いか。炎華と仲直り出来たから良いよな。俺は受験の事と受験の日のあの盛り上がりを話した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る