第33話〜冬に花は咲かない

鳥が鳴いている、どうやら机に伏したまま寝ていたようだ。俺はグッと体を伸ばして洗面所に行った。


「これで…もう、悩まなくていいんだよな。これで良かったんだよな」


顔を洗って、鏡を見る。久しぶりにぐっすりと寝たから顔色が良いし気持ちもスッキリしている。


「あれ、お前もう起きてたの?日曜だってのに早いわよね」


姉貴が後ろから現れた。だが俺は無視してリビングに向かおうとすると、


「無視すんじゃないわよ。泉水ちゃん、最近疲れてたのに今日は凄く爽やかって感じね。ま、お前の事だから誰かに愚痴をぶっぱなしたんじゃないの?」


俺はそれを聞いて、ヒヤッとした。客観的に見て俺のあの行動は間違っていたのか?冷静になって炎華の事を聞いていたら、こんな謎が残った状態にはならなかったのだろうか。


「うるせぇやい。愚痴じゃなくてただの…そうお願いみたいなもんだよ。俺はもうアイツとは関わりたくなかったからそう言っただけなんだよ」

「ふーん、それって愚痴とかお願いとかじゃなくてタダの罵倒ばとうとかじゃないの?お前はカッとなったら人の気持ちお構い無しにバカスカ言うからね」


姉貴は欠伸あくびをしながら言った。そして俺は洗面所の扉の近くに行き、姉貴は俺がいた場所に行き、顔を洗った後に俺に言った。


「お前より長い事生きてるから言うけどね、人と喧嘩した時は話し合う。喧嘩した時は必ずお互いに何処どこか勘違いしてるのよ」

「待てよ、姉貴。なんで俺が誰かと喧嘩してる感じになってんだよ」


姉貴はタオルで顔を優しく拭いた。そして鏡越しに俺と目が合う。


「何年、喧嘩友達きょうだいやってると思ってんのよ。そんぐらいすぐに分かるっーの」

「姉貴には勝てねぇや…」


やはり俺のあの行動はおかしかった。自分をかえりみて後悔が雪のように心に浸透しんとうしていく。

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