第32話〜1番の後悔

明かりは机についている電灯だけで部屋を照らしている。過去問の影がくっきりと出来ている。もうすぐ…というよりかは、あと少しで年明けが来る時に俺はまだ受験勉強をしていた。


(眠い…)


どれだけやったかは分からないが、10時はとうに超えているだろう。眠気が襲ってくる。俺はまだ、頑張らないと頑張らないと俺は、俺は俺は……。


最近いつもこれだ。よく分からない感情に揺さぶられて頭の整理がつかなくなる。たまに扉から窓からカーテンから壁のシミから目線を感じる。みんな俺を見て嘲笑って責め立てるんだ、俺の努力も知らないくせに。


あー…まぁ、うん。こんな支離滅裂しりめつれつな事言っていて仕方ないよな。こんなやべぇ事を考えてしまう原因は大方ついている。


「はぁ…受験だよな…」


受験のプレッシャーだ。今まで自由気ままに好き勝手にしてきたツケが今回ってきたのかもしれない。俺はこういう本格的なふるいにかけられるのは初めてなのだ。


「まだ、まだ大丈夫」


そう自分に言い聞かせて過去問を解こうとするが、もうまぶたが開かない。そこからの意識はなくなった。たぶん、寝たのだと思う。


「…ちゃん、泉水ちゃん!」

「やめろ…揺らすなって…ってぇ!?ほ、炎華なのか?」


眠気のまま連れ去られたのは炎華の部屋だった。俺はビックリして炎華から少し距離を取って座った。ここに来るのは久しぶりだが前回のようなおどろおどろしい見た目ではない。そんな事より…


「なぁ、あれってなんなんだったんだ?」

「あれって何?何の話?」


そう、あの化け物の事だ。俺の事を必要以上に追いかけ回してきたあの化け物だ。俺は彼女に聞いてみるが彼女は知らないようだった。そんな猿芝居は俺には通用しないぜ。


「ふざけんなよ!あれのせいで俺はあの時死にかけたんだぞ。あいつはお前の病気を治すために俺を殺そうとしていたんだろ!はっきり言えよ、この人食い野郎!」


今までのストレスを全て隣にいる炎華にぶつけた。彼女は人生で初めて人に悪口を言われてたのですぐに泣き出してしまった。


「待って待って…泉水ちゃんの言ってる事が分からないよ。あいつって…誰なの?それに炎華の病気は…」

「うるさい!近寄るなよ、そうやって俺を殺そうとするんだろう?!お前なんて大っ嫌いだ!二度と顔も見たくない、このが!」

「い、痛い!…ひ、ひどいよ」


近寄ってきた炎華を殴ってしまった。この時の俺は半狂乱状態で正常な判断が取れていなかった。だから、彼女の足が見えた時にキツく巻き付く気づかなかった。


「どうして炎華が嫌なの?炎華はまたあの時みたいに泉水ちゃんと…だって炎華…もう…じゃうの…ひどい人…」


途中からまた眠気が襲った。だがはっきりと聞こえた所がある。


「炎華達はKing王様平民commoner。身分も見えている世界も違う、最初から線は交わらない運命だった」


それだけちゃんと聞こえた。今思えば、これは的を得ているし俺は人生で1番の失態をおかしたと思う。



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