第14話〜優しさ

彼女は飴岩泉水あめいわイズミの夢は必ず叶うと信じていた。根拠はどこにもないが、世間知らずの箱入り娘は確信していた。


「全肯定かよ、照れるな。まーそんなことを言う炎華ほのかもきっとすげぇ夢を持ってるんだよな〜」


同い年の子に応援されると、なんだか恥ずかしかった。それで照れを隠すためにちょっと煽りを入れてしまった。


しかし彼女は自分の夢を話したかったらしくまた、考えがまとまった良い時に聞かれたので意気揚々と話した。


「うん、持ってる!炎華ほのかはこのお部屋から出て、お家の外に行きたいしお散歩もしたいんだぁ。それとね?電車とか自転車にも乗ってみたいし、恋愛とかロマンチックな事もしてしみたいし、バスケットボールとか野球もやってみたいし水道水を飲んでみたいなぁ。あと、あとは」

「まて、待て待て。ちょっとだけ落ち着いて」

「えぇー、今は炎華ほのかが喋ってるのにさえぎらないでよね」


彼女は頬を膨らませて、怒っている。話をさえぎったのは悪かった。それは謝るけど、早口の大声でバンバン話されると分からなくなるからやめて欲しい。


聞いていて思った事がある、今は夢の話をしている。それは分かるが彼女が言っているは俺にとっては当たり前で、日常的なものである。


「なぁ、この部屋から出たことあるか?」

「もー話変えないでよ、せっかちさん」


口調はいつも通りの小さな子供のようだが、表情は成熟したオトナのようだった。何かを覚悟したそんな顔だ。そこには触れてはいけない、そう感じた。


「今の所はない。でもね?あと来年あたりかなぁ?それぐらいには外に出れるの、思う存分にね」

「じゃあ病気がその時ぐらいに治るってことか。なら、炎華ほのかの言った夢は叶い放題じゃんか」


彼女の表情は明るいようで少し影を感じる。


「うん、そうだよ。だから来年の春あたりには泉水いずみちゃんと一緒に日向ぼっこ出来るから私をお姫様だっこしてね」

「お前ぐらいなら持てるぜ、俺」


来年の春ぐらい…俺が高校入学したあたりかね。それぐらいには一緒にデートが…あぁ!何考えてんだマジで。


でも来年の春には病気は治るって事だし、こんな夢じゃなくて、現実でも会えるんかなぁ。本当に会えれば俺はオカルト全般とゾンビは信じる事にする。





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