第15話〜あくまでも理想


「日向ぼっこ以外にどんな事がしたい?」

「うーん、迷っちゃうなぁ」


炎華ほのかは真剣な顔で考え込んでいる。俺はもちろん日向ぼっこよりボウリングとかあのゲーセンにあるホッケーもどきもやりたい。


彼女は何か思いついた顔で俺の顔を見る。とてつもなく凄いことでも考えたのかな?


「日光浴したい!」

「日向ぼっこと同レベじゃん」


天然なのか?でも、見た目は人工そうだけどな。人の手で作られたみたいな見た目しているし、あながち間違えでもないのかも。


「ドウレベ?何かの遊具?」

「同じレベルってこと、これ常識だかんな」

「憲法にもそう示されてるのかな」

「そこまで重要じゃねーわ」


同レベ知らないのか。うーん、やっぱりここが日本ということは分かるけどここがどこの土地なのかはさっぱり分からないよな。


彼女に聞いてみることにした。


「超重要なこと思い出した、というか思いついた。ここってどこなの?地名的なアレはないか?」


炎華ほのかは考え込んでいる。このあたりの土地をよく知らない、というよりは家より外は出たことがないためよく分からないのだ。


しかし彼女は父が言っていた言葉を必死に思い出そうとしていた。


「えー、えー、いぬわ、いや違う。外に出たことないけどね、確か…「い」が最初につくの!あーでも「さ」かもしれない」

「そうだ!」

「ねね、泉水いずみちゃんから言ってよ!泉水いずみちゃんなら自分の住んでる所なんて、絶対に知ってると思うし」


自分が分からないのなら、先に相手から言った方が思い出せるかもしれない。そんな甘い考えで彼女は言う。


「俺が住んでるのは、まぁド田舎の夜中にコウモリが飛んでるような所だよ」

「へぇ、コウモリって日本にいるんだ…って、地名を言ってよ!ち、め、い!」

稲丘いねおか市の玄白町。田舎だし近くにコンビニとか全くないけど心霊スポットならあるんだぜー」


炎華ほのかはテーブルに乗って、俺の方へとハイハイで進んでくる。

テーブルにあったケーキスタンドや食器はテーブルの隅にやった。長いワンピースの丈を邪魔そうにして。


それに少し引いたから、椅子を後ろへと移動させる。座ったままで移動をしたから、床は嫌な音をたてる。


「きゅ、急に何ですか」

「……っしょ…」


…っしょ……の所しか聞こえなかった。それぐらいボソッと吐き捨てた言葉だったのだ。え、俺きっしょって言われてんの?


いきなりすぎてついていけなかった。

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