第8話〜姉貴の彼氏

学校から帰り、家に帰る。今日も遊びの約束は出来なかったのから家で宿題でもするか。そう思いながら玄関の扉を、開けると見知らぬ靴を発見した。


「ん?親父の新しい靴か?でも親父はこんな明るい色のスニーカーなんてかないしな」


じゃあ、姉貴の友達か?でも靴の中の底を見ても27って書いてあるし確実にこんなにデカい足の女子はいない。


俺に、あるひとつの考えが浮かんだ…姉貴の彼氏の靴では?いや、そんな事考えたくない。


「いやいやないない、絶対にない」


いっつも俺のおかずを狙ったり、大事に飾っていたプロの選手のサイン入りのタオルを使ったりするあの姉貴だ。


そして玄関で靴を脱いで、リビングに行ってみると姉貴がいた。ほらなやっぱり姉貴の彼氏なんてまぼろしに過ぎないんだ。


「姉貴、そのお菓子くれよ」


姉貴はお菓子の袋を開けている途中で、袋が中々開かないようだ。そして彼女は俺を見て「ケッ」と一言だけ言って開けた。


俺を見ながら袋をつまんで開けた、これは自然に力が入ったのだろうか。


「無理よ、お前にあげる分はないわ。そこのバナナでも食べときなさいよ」

「え〜ケチ」


通常運転の姉貴で、ホッとした。階段から足音が聞こえてリビングの扉を開ける音がして、俺は音がする方向を見た。


「あ、弟?お邪魔してまーす」

「もう下来なくていいって言ったじゃんか」


…え、誰?こんな爽やかな奴知らない。少なくともこんな爽やかな人は姉貴とは付き合わないでしょ〜まさかねー。


「お姉さんとお付き合いさせて頂いてます、兼子健かねこけんって言います」

「もーけんちゃん言わなくていいから。…お父さんには内緒だからいずちゃん」

「言わなくちゃ失礼だ。琥珀こはくの弟だから大丈夫だろ?」


姉貴を名前呼びで…だと、あー本当に今までの人生の中で1番最悪な事が起きた。目の前で姉弟がイチャイチャしてる。


「あーどこで会って、なんで付き合ったわけ?ちょっと理解が追いつかない」


けんは姉貴の肩に手をまわして、答えた。俺の目の前でイチャイチャするのは本当にやめて欲しい、いやマジで。


琥珀こはくちゃんとは大学のゼミが一緒でそこで知り合ったんだ。それでお互い惹かれあって僕から告ったんだ」

「ほんとにけんちゃんって頭良いし気遣い出来るしほんと理想って感じ!」


お互いに顔を向けて唇との距離はあと数センチになったところで、俺は大声を出した。


「待てよ!まだ質問は終わってないぞ、それで今は付き合って何日目?」


まぁこんなにイチャイチャしてんだし、付き合いたてだろ。俺は台所にあったバナナを取り、剥いて口に入れた。


そう軽く思っていたが瑚珀こはくの一言で俺はバナナを 吹き出してしまった。


「もう1年ぐらいよ」

「ぶっ!…はぁあ?1年ってことは365日も付き合ってんの?なんで教えてくれないんだよ」


瑚珀こはくは突き放すように言った。去年の姉貴に彼氏の気配どころか男の気配すらなかったっていうのに…隠すのが超絶ちょうぜつ上手いんだな。


「はぁ、そんなにとやかく聞くんだったら、お前もさっさと彼女作りな。ヨボヨボになる前にね」

「恋愛の熟練者プロフェッショナルからアドバイスだ、恋人は瑚珀こはくちゃんのような子を選べ」

「もー口が上手いんだから、そんな所が好きよ健ちゃん♡」


死んで来世がゴミ袋になるか、彼女が姉貴そっくりか、どっちを選ぶとするなら俺は断然ゴミ袋をチョイスする。


吐いたバナナをゴミ箱に入れて2階に戻った。体調が悪い…あのイチャイチャを見たからだな。確実にそうだ。



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