第5話 原稿をやらずにゲド戦記を見たよ
先週金曜ロードショーで「ハウルの動く城」を見たので、その流れで今週「ゲド戦記」を視聴する。そういえば一回も見たことがなかった。
というのも見ようとする前にいろんな方から「ゲドは……」というお話をたくさん聞いていたので、見なくていいやと思っていたのだ。
なので、感想。
えーっと、CMでおそらく新海誠監督が製作されたであろう「大成建設」のアニメーションが流れたのですが、
それの方が100億倍美しくまとまりがありました。
とりあえず褒めるところから始めましょう。
○良い点
………。
………。
あ、黒くて粘着質な触手のような液体のアニメーションは妙にリアルでした。もののけ姫とか千と千尋のあれを思い出します。
○そんなところは褒めちゃっていいのか、という点
だいぶ前にコクリコ坂のシネマハスラーでライムスターの宇多丸さんは「素人が一本劇場用アニメ映画を作れと言われても作れない。それでも曲なりにもできたのは驚異的」とおっしゃっていた。それは確かにすごいんだけど、宇多丸さんはこうも言っていた。「そんな理由で映画を褒めるのは本末転倒」
○お待ち、と言いたい点(あえてダメとは言わない)
・何が何だかわからない。
私の頭が悪いのだろうか、この話、何が何だかわからない。物語がぼんやりとしていた。アレンが、物語が、何に向かって行ったのかがわからないのよ! 魔法使いの世界の設定も微妙にわからなかったし、ポスターにある竜の出番も最後しかない。
・物語の点と点つながりの悪さ
一言で言えば、流れが悪い。例えば。「命を大事にしない奴なんか大嫌いだ」というテルーのセリフ。ここに至るまでの、二人のシークエンスの内容が薄い。
監督の中で、キャラクターが言いたいこと、映画でやりたいシーンがあるのは悪いことじゃない。そして、こういうシーンをやりたい、みたいな熱意は、わかるところもある。だけど点と点の間の線がない。
見せ場や言いたいシーンがあるのはわかる。そのセリフやシーンを描くために今までがあるわけだから。しかし、しかしだよ。
「言いたいことはわかる。だけど、そこまでの内容が言いたいことにそぐわない!」と思うこともあった。
・美術の質感がゼロ
これが一番衝撃だった。開始1分で「質感がない」と思った。砂漠でアレンが戦っている時、砂の質感がない。建物がのっぺりしている。飯がうまそうに描けていない。
○突っ込みたい点
・テルーの唄
なんですが、「心を何にたとえよう 鷹のようなこの心」と歌っておるのですが、もう心を鷹で例えておりますよ!ついでに手嶌葵さんの美声を堪能して欲しいのか、二番までフルで歌っているけれど、これが結構長かった。
・タイトルに語弊あり
ウィキペディア先生によると「戦記」というのは「戦争記録、及びそれを題材にした創作」とあります。映画は2時間ありましたが「戦争」という要素は全くなかったのが何気に一番問題です。だって、表記に語弊があるんだから。先週のハウルの方がよっぽど戦争していたよ。
・アレンがパパを殺した理由
父親を殺す、というのはかなりショッキングな導入部なので、お前さんそれなりの理由があるんじゃろな……と思いながら見るわけですが……ぼんやりとした理由で殺すんじゃない!!
【総括】
アレンは父親を殺す必要がなくて、ウサギに売られる必要もなくて、テルーは歌う必要がなくて、ハイタカは魔法使いではなくそのへんの優しいおじいちゃんでよくて、テナーは魔女じゃなくてもよかった。
「監獄のお姫さま」という素晴らしいドラマの4話で、満島ひかりが小泉今日子を壁ドンしながら言い放った言葉がある。その言葉を投げさせていただこう。
「何か言いたいのはわかるけど、何が言いたいのかわからないのよ!」
ただし、ということを付け加える。
世界設定の伝わっていない感じ、キャラクターの内面の暗さのバックの薄さ、会話が微妙に不自然だったり、アレンとテルーがわかりあう瞬間のシークエンスの流れの悪さ、物語終盤でテルーがあれだったけどそれまでの伏線なんかあったっけ? 等々。多分全部、ゴローの中では繋がっていることだったんだろう。だったんだろうけど、視聴者には何が何だかわからなかった。それでも一応、素人が2時間の長編を作ったのだから確かに驚異的だ。あんたできるか?って聞かれたら私はできないです。
そして、実はこういう「作者本人の中では繋がっているけれど見る側に伝わっていない」ことは、創作者のあるあるで、自分にも身に覚えがあることだ。
「自分もこういう、見る側に伝わりづらい作品を作ってしまう危機がある」ということは肝に銘じた方がいい。
そう言った意味では見てよかったと思った映画でもあった。
そして、今日一日ゲドを見たため原稿は進まなかったよジェバンニ。
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