第4話 定金伸治というタフガイ

 某所で「文章を書くのが苦手だ」というとんでもないカミングアウトをしてしまったワタクシだが、何故だか日記だけはある時期から抵抗なくつらつらと書けるようになってしまった。


 理由はあるにはある。高校生の時、延々と定金伸治先生の日記を読んでいたからだ。


 ゼロ世代の前半といえば、こういった小説投稿サイトよりも、個人サイトで小説を発表していた方も多いと思う。「ソード・アート・オンライン」の川原礫先生もそうですね。そして小説家の先生も、個人サイトを当たり前のように持っていた、気がする。


 定金伸治先生の作品に出会ったのは高校生の時だ。家に一冊だけ、ジャンプJブックス版の「ジハード」が落ちていた。そこからインターネットで定金伸治の作品を検索し、集英社スーパーダッシュ文庫から販売されていた「姫神」の存在を知り、1巻だけ注文するはずが全巻注文してしまったところから始まった。当時の私は古代史にハマっていたのだ。


「姫神」は、私に初めて「小説を読んで感動して泣く」ということをさせてくれた作品だった。今のところ後にも先にも、「姫神」の最終巻以外で号泣した作品はない。「ジハード」のウィルフレッドの外伝でもちょい泣いたが、あれほどではなかった。要するに私は、定金伸治先生の作品以外で落涙したことはないのである。


「姫神」以来、すっかり定金伸治のファンになってしまったワタクシ。Jブックス版ではなくて、折角だから当時販売されていた集英社文庫版の「ジハード」を全巻買って読んだ。Jブックス版のジハードは入手困難だったからだ。未だに私の目には、ヴァレリウス・アンティアスとウィルフレッド・アイヴァンホーのアスカロン攻防や、エルシード姫のはちゃめちゃなわがままっぷりに、ルイセのラスカリスに対する淡い恋などが目に浮かんでくる。ラスカリスが死んだ時は悲しかったよ。あと、強すぎるリチャード獅子心王、キヤトって要するにあの人だよね、とか。


 だいぶ話が逸れたが、私に多大な影響を与えた定金伸治先生も、個人サイトというものをお持ちであった。ここに著書の紹介がされていたり、日記が公開されていたりした。日記、そう、タフガイの日記が。


 この日記が、だいぶ、だいぶ、かなり、


 面白かったのである。


 毎日毎日読んではゲラゲラ笑っていたのである。


 日記を読むために作家の個人サイトを巡回するファン。もはやこれはストーカーに近い。それぐらい面白く、ニヘニヘゲラゲラしながら定金伸治先生の日記を読んでいたのである。あんな面白い作品を書く人が、こんなへなちょこなことを書いて、しょうもないことを書いていたのか、と思うと、次の更新が待ち切れないほどだった。

 同時にタフガイの日記を読んでこうも思った。日記ってこんなに面白おかしく書いてもいいんだ!とか、こんなことも書いていいのか!とか、私って生きてていいんだ!とか。


(ちなみに定金伸治先生が昔のサイトで書いていたこの日記は「タフガイのタフガイによるタフガイのための日記」というタイトルで徳間書店から出版された。もちろん持っている。乙一先生、松原真琴先生、城崎火也先生、映島巡先生がゲストとして定金伸治先生の日記にツッコミを入れている。そして表紙はなんと、若かりし頃の奥野瑛太さんである。朝ドラにも出てた俳優でサイタマノラッパーのロードサイドの逃亡者。ある意味ものすごく豪華な本)


 そんなわけで私に日記を書くに抵抗がないのは、定金伸治先生というタフガイがかつて書いていた日記がかなり影響している。日記やブログやエッセイはもっと自由であるべきで面白おかしく書いても良いのだ。


 それにしても定金伸治先生は、はやくワタクシに「ブラックランド・ファンタジア」や「制覇するフィロソフィア」や「ユーフォリ・テクニカ」の続きをはやく読ませていただけませんかね?ほんと、切実に……。

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