5月26日(金)曇り 後輩との日常・野島結香の場合その3
台風が迫り始めたらしいラッキーゾーンの日。
僕はここで調べるまでラッキーゾーンのことを知らなかったけど、記念日に設定されるのだから、撤去されるまでは名物だったのだろう。
そんな今日は文芸部の活動が再開されたけど、さすがにテスト明けなので、みんな少しだけ緩い感じになっていた。
「産賀さん、先日は姉がすみませんでした……」
すると、雑談タイムに入った直後、野島さん(妹)がそう言って頭を下げてくる。
いきなりの行動に僕は周りに説明しながら、野島さん(妹)に頭を上げるように言った。
「あれくらいならいつものことだから……」
「……はぁ、やっぱりいつもあんな感じなんですか」
「いや、いつもは言い過ぎだけど、少なくとも僕が話す時はあんな感じだよ」
「それ、産賀さんの前だけじゃなく常時そうだと思います」
野島さん(妹)は呆れた感じで言う。
恐らく家でも野島さん(姉)の言動は変わらないのだろう。
「まったく……」
「でも、そこが野島さんのいいところでもあるから……」
「産賀さん……今どっちのこと言いました?」
「あっ、ごめん。お姉さんの方」
「……わかってはいましたが、その呼び方ややこしいですね」
「ま、まぁ、部活にいる限りは野島さんは1人だから……」
「いえ。姉と一緒にされるのは嫌なので、別の呼び方にしてください」
「そう言われても……」
「結花さんとか、結花様とかなんでもいいですよ?」
そう言った野島さん(妹)は少しだけ笑みを見せる。
……なんだろう。平気で結花様とか行っちゃうこの感じは、何となく野島さん(姉)に通ずるような気がする。
「じゃあ、結花さんで」
「産賀さん、真面目過ぎませんか? そこは1回くらい様付けしてもいいのに」
「ぼ、ボケだったんだ」
「まぁ、いいです。これで姉のことは野島さんって呼んでもらっても構わないので」
「そのセリフ、野島さん……のお姉さんの方にも言われそうな気がするよ」
「ええっ!? なんでそんなこと言うんですか!? 被りなんて絶対嫌です!」
「あ、あくまで予想だから」
思った以上に怒りの反応が返ってきたので、僕は怯んでしまった。
先日会った時ののじ……結花さんはどこかよそ行きな感じがしたけど、今の結花さんは本来の感じが出ていると思う。
つまりは……根本的に野島姉妹は似ているのかもしれない。
「というか、なんでそんな話はどうでもいいんです。産賀さんからはそろそろ彼女さんの話を……」
「……そっくりだなぁ」
「何がです?」
「ううん。なんでもない」
他の兄弟姉妹を見る機会がそれほどなかったので、産賀兄妹と野島姉妹の違いに驚かされることが多い。
まぁ、明莉も学校と家では態度が違うし、結花さんも家ではここまで反抗的ではない……と思いたい。
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