5月1日(月)晴れ 野島実香との日常・再その2

 平日なので通常通り登校する5月初日のメーデー。

 通学路で見かける車の数が心なしか少なく見えるのは、思い込みのせいかもしれない。


 そんな今日は野島さん(姉)……いや、クラスでは普通に野島さんでいいか。話す機会があった。


「産賀くんと岸本さん! うちの妹、部活だとどんな感じ?」


「えっと……わたしはまだ何か言えるほど話していないのだけれど……」


「僕もちょっと話したくらいだよ」


「そっかぁ」


「でも、姉妹っぽい感じはあったよ。当たり前なんだけど」


「う、うん。わたしも妹がいるのは知らなかったけれど、何となくわかったから」


「確かに並んでたらわかりやすく姉妹だねって言われるけど、同級生から見てもそうなんだなぁ」


 野島さんはしみじみと言う。


「いや、それがさ。せっかく文芸部に2人がいるから部活の時はどんな感じなんだろうと聞いてみたかったのに、結香のやつ何も話してくれないの」


「そうなの? 僕が話した感じは結構喋ってくれる感じだったけど」


「そこなんだよ。基本はお喋りなはずなのにここ最近……いや、受験シーズン入った後くらいか。あんまり話してくれなくなって」


「それは……もしかして大変なこと?」


 一人っ子の路ちゃんは僕を含めてそう聞いてくる。


「大変ってわけじゃないけど、なんかあるのかなぁ。反抗期って姉にも起こるものなの?」


「ぼ、僕に聞かれても……」


「いや、本当に中3になった直後とかはそういう感じじゃなかったんだよ。産賀くんの妹さんは喋らなくなったとかないの?」


「今のところは特に」


「じゃあ、これからか……」


「なんでそうなる前提!?」


「だって、私も姉として対応をミスった記憶ないから、この時期は自然と起こるのかと」


 その理屈に僕を巻き込まないで欲しいけど、世の中の兄弟姉妹には何かの切り替わりで急に仲が悪くなることもあるらしい。

 野島さんの妹さんも受験や進学の間に色々な変化があって、話しづらくなってしまったのかもしれない。


「……まぁ、そのうち話してくれるだろうし、今はいっか」


「「いいの!?」」


「おお。息ぴったりだね。部活でもそんな感じなの?」


「そ、そんな感じかどうかは」


「わからないけれど……」


「うー……実際の光景を見ているやつが傍にいるのにわからないのはもどかしいー」


 どうやら野島さんの関心は僕と路ちゃんの部活内の様子で、妹さんとあまり話せていないのは大きな問題ではないらしい。

 少し見た感じから姉妹っぽいとは言ったけど、今日の感じから結構違うところもあるのだろうと思った。

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