7月13日(水)曇り 拡散する大山亜里沙その14
夏休みまでちょうど1週間前の水曜日。連日の話題から意識はすっかりそちらへ持っていかれているけど、テスト返却はまだ終わっていない。
「うーん……」
そんな中、大山さんはある授業で返却されたテスト用紙を見つめながら浮かない顔をしていた。それが何だか気になった僕はその次の休み時間に大山さんの席に向かう。
「おっ。うぶクンちょうど良かった」
「えっ? ちょうどとは……?」
「いや、実は今回のテストも思ったよりはあんまりできてなくてさ。あっ、もちろん、みんなで勉強会したことは役に立ったんだケド、それ以外に個人で勉強できるのも限界あるかなーって思ってて。だから、この夏休みに塾とか集中講座とか始めようかと思って」
「へー でも、それで言うなら僕は何も習い事やってないよ」
「それはわかってるんだケド……ほら、ミチが塾通ってるじゃん? その塾がどんなカンジなのか聞いてみようかなーって思ってるんだケド、いいのかな?」
「それも僕に聞かれても困るんだけど……」
僕は素直にそう答えるけど、それに対して大山さんは少し呆れた顔をする
「うぶクンさぁ」
「ええっ!? 何も間違ったこと言ってなくない!?」
「そうかもしれないケド……ほら、この前の勉強会の時にアタシが塾のことでちょっと変な空気にしちゃったでしょ? だから、うぶクンにワンクッション挟んで貰おうと思ったワケ」
「な、なるほど。それならそうと言っててくれたらいいのに」
「そこは察してくれるかなって思ったの。それに……勉強会のこと抜きにしてもホントに聞いてもいいのかなってカンジもあったし」
「どういうこと?」
「……ううん。アタシの気のせいかも。回りくどいことせずに直接聞くのが早いか。ということで、うぶクン。突撃しに行くぞー!」
「結局付いて行かなきゃいけないんだ」
「旅は道連れってやつ!」
それから路ちゃんの席へ行くと、大山さんは塾に関して色々な質問をしていた。その中で僕が見た限りでは大山さんが不安になりそうな空気はなかったように思う。
それはそれとして、僕も遊びばかりではなく、勉強を補強する方向も考えてもいいかもしれない。手っ取り早いのは路ちゃんと同じ塾に通うことだけど、流れに便乗した感じになってしまいそうだ。
いや、その前に将来的にどうしていくかを考えなければならないのか。清水先輩も悩んでいるけれど、僕もそれが決まらない限りは、勉強の目的も定まらないだろう。
時間はたくさんあるけど、考えることもたくさんある夏休み前だ。
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