7月12日(火)曇りのち晴れ 後輩との日常・岸元日葵の場合その5
久々の部活日である火曜日。夏休み中の活動についてはテスト前にざっくりと確認していたので、今日は座学になったけど、テスト明けだからか緩い空気で進んでいく。そう思っている時点で僕も気が緩んでいるのだろう。
「産賀センパイは夏休み何するんですか?」
そんな中、ひときわ開放感に溢れる日葵さんは昨日も聞いた質問をしてくる。当然ながら昨日の今日で何か考えているわけがなかったので、僕は「全く考えてない」と同じ回答になった。
「マジですか。じゃあ、去年は何してたんです? 海とかプールとか行きました?」
「あー プールには行ったよ。あとはカラオケとか夏祭りとか……うっ」
「えっ? どうしたんですか急に」
頭を抱える僕を見て日葵さんは不思議そうな顔をする。すっかり忘れていたけど、去年の主なイベント事は……本田くんと大山さんをくっ付けるために動いていたのだった。最近はその話題に触れる機会も少なくなったけど、いざ思い出すと何だか頭と心が痛い。もう本人たちは割り切っているだろうに。
「いや、ひと夏の苦い思い出が蘇って……」
「それって失恋したとかですか!? 詳しく聞かせてくださいよー」
「そ、そういうのじゃないから。日葵さんは何か予定あるの?」
「え~ そう聞いてくるってことは、産賀センパイはひまりとお出かけしたいってことですか? 大胆ですね、このこの」
「何でそうなるの!? じゃあ、海とか山とか行く予定は?」
「それはないですねー ひまりはこう見えてもインドア派なんで。というか、日焼けしたくないです」
日葵さんは何となく活発に見えるからそう言ってしまったけど、どうやら偏見だったらしい。まぁ、文芸部に入っているのだからインドア派の方が正しいというか、相応しいけど。
「あっ、産賀センパイが行ったのって室内プールですか? いいところあるなら行きたいと思ってるんですけど」
「うん。バスで行くことになるけど、屋内プールだったよ。色々アミューズメントがある」
「ほうほう。実は文芸部の1年生でどこか行こうって話になってるんですよ。だから他にもおすすめスポットあったら聞かせてください」
「へー、1年生で……桐山くんも?」
「当然です。ハブったら可哀想じゃないですか」
それは日葵さんの言う通りだけど、女子3人に囲まれて男子1人行くのはなかなかに勇気がいると思ってしまった。いや、桐山くんにとっては姫宮さんと近づくチャンスなのかもしれないけど。
「でも、僕が教えられるのはそこくらいかなぁ。カラオケとかは近場だし」
「そうですか。じゃあ、次の聞き取り調査行ってきます!」
そう言いながら日葵さんは路ちゃんや先輩方にも同じように聞いていた。おすすめの遊び場所を聞くというのは、僕にはない発想だけど、夏休みを効率的に遊ぶためには有効な戦術だと思った。
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