6月24日(金)曇り時々晴れ 夢想する岸本路子その7
結局薄暗いままだった平日の金曜日。テスト前最後の文芸部が始まり、テスト後の予定について少し知らされる。昨年と同じく夏休みのお盆期中は部活動が休みになり、それ以外の週は通常通り火曜と金曜に部室が開かれる。それに加えて創作の参考にできるような課外活動も検討中になっている。
ただ、それらの活動を問題なく行えるかどうかはテストの結果次第だ。赤点があまりに多いと夏休みの序盤は補習で潰れてしまう。ミーティングも「テストをがんばりましょう」の言葉で締められた。
「良助くん」
そんなミーティング終わり。僕は路ちゃんから声をかけられる。
「もし良かったら来週のどこかで勉強会しない? 華凛ちゃんも交えて」
「うん。僕は基本暇だから……あれ? 今回は大山さんと一緒じゃないの?」
「ううん。予定が合いそうな誘ってみるつもりなのだけれど、まずは良助くんからと思って」
「そうなんだ。でも、そのメンツの中だと塾がある路ちゃんが一番予定が詰まってるだろうから、僕はそれに合わせるよ」
「ありがとう。それじゃあ……とりあえず来週の火曜日の放課後にやる予定で」
僕がその言葉に頷くと路ちゃんはすぐにスマホを取り出して、恐らく花園さんや大山さんに連絡を取り始める。
この前はお役御免となっていた僕を参加させてくれるのは、路ちゃんなりの気遣いなのだろうか。塾に通い始めたから今度は僕が教えられる側になるかもしれない。
僕が呑気にそんなことを考えていると、今度は水原先輩がこちらへ近づいて来る。最近は色々と忙しいのか、部活に顔を見せる頻度少し減っていたので、久しぶりの会話だ。
「産賀。ちょっといいか?」
「はい? なんでしょう?」
「……席を移して話そう」
水原先輩にがそう言いながら部室の後ろの方を指すので、僕はそれに付いてく。先ほどのミーティングで何か問題があっただろうかと考えたけど、清水先輩は全く別のことを話し出す。
「最近の岸本、大丈夫そうか?」
「えっ? 大丈夫って……ああ、最近ちょっと疲れ気味って話ですか? それならここ1週間くらいは問題なさそうですよ」
「そうか……問題ないならそれでいい」
「でも、路ちゃんのこと把握してたんですね。森本先輩やソフィア先輩から聞いたんですか?」
「……実はな。今岸本が通っている塾は私が紹介したところなんだ。そこは私も通っている塾だからちょうど2年生と3年生が入れ替わるタイミングで見かけることがある」
「そうだったんですか。知りませんでした。」
「ああ。その見かけるタイミングの岸本が少し辛そうにしていたから、気になってはいたんだ。だが、本人に連絡しても大丈夫と言うばかりで……」
「なるほど。やっぱり普段の授業と部活もしながら塾に行くとなると、大変なんですね」
「……産賀。このテスト期間が終わってからでもいいから、また岸本のことは気にかけてやってくれ。私も暇があれば部室へ来るようにするから」
「は、はい」
そう言った水原先輩の表情はえらく真剣だったので、僕も思わず緊張した受け答えになってしまった。
何はともあれまずはテストを何とか切り抜けないことには部活も楽しい夏休みも始まらない。明日の休みから気を引き締めていこうと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます