4月13日(火)曇り時々小雨 宿泊研修その2

 宿泊研修2日目。今日のメインイベントは野外炊事でメニューは定番のカレーだ。それを昼食として食べた後はそのまま学校に帰還することになる。天気はあまり良いとは言えないけど、野外でも問題なくできそうなのは良かった。


「とりあえず食べられるものを作ろー!」


 本日の2班の目標は昨日とは打って変わって何故か意識が低い。確かに飯盒炊爨は少し難しいところもありそうだけど、カレーに混ぜてしまえば何とかなりそうな気もある。


 そして、飯盒炊爨をしたことがある大倉くんと大山さんはご飯の担当、僕と栗原さん、児島さんはカレーの担当になった。煮込む時間を考えると、もたもたしてられないので、僕は無言で野菜を切っていく……つもりだったが、隣にいた栗原さんが僕のまな板の方を覗き込んできた。


「産賀くん、切るのうまー! 普段料理とかするん?」


「いや、普段は全くしないよ」


「それでもわたしよりキレイに切れてるし。すごいわー」


「そ、そんなことは……」


「あはっ、照れてるー! コジちゃん、みてみてー!」


 昨日の今日で僕がからかいやすい人物とわかったせいなのだろうか。切ってる最中にやたら絡まれてしまった。いや、無視されるよりは全然良いんだけど、上手い対応ができなくて、僕の方は恥ずかしさが積もっていく。


 何とかして仕込みが終わって具材を煮込み始めると、僕が鍋の見張りをすることになった。他の班も順調に進んでいるようで、鍋と飯盒を見る人以外は各々好きなように喋り始めている。


「おっ、うちもカレーはいい感じみたいだね~」


 そう僕に言ってきたのは大山さんだった。つまり、大倉くんも僕と同じく飯盒を見張っていることになる。


「飯盒の方もいい感じになりそうだよ☆ 大倉くんが結構がんばってくれたし」


「そうなんだ。大倉くん、よく中学時代のこと覚えてるな……」


「だよね~! アタシもキャンプで1回やった覚えあるケド、おいしかったことしか覚えてないもん」


「でも、美味しかったなら上手く炊けてたってことじゃない?」


「そうなのかな? 結構小さい頃に行ったから、その辺覚えてないんだよねー」


 それから大山さんと世間話を続けていると、いつの間にかカレーと飯盒は完成していた。僕からは見えなかった大倉くんの活躍(?)によって、ご飯は硬すぎず柔らかすぎず絶妙なものに仕上がっていたので、今回は班の目標通り食べられるものが作れたと言える。


「写真撮るから二人もきてー! 今だけスマホOKらしいから~」


 恥ずかしさもあったけど、この2班での思い出も結構良いものになったと言って良いだろう。こうして、僕たちの宿泊研修は思ったよりもあっという間に終わった。

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