最終決戦
@fluoride_novel
第1話
「これでもう、終わりにしよう」
「……何今更言ってるの?」
「だから、君が早く僕に降伏すればいいんだよ」
「……はっ! 笑わせてくれるわね……今更この戦い、降りられる訳無いじゃないの」
今一度、気を引き締めて身構える。緊張感で私の手が小刻みに震えてるのを見つけて、彼が鼻で軽く笑った。
「さぁどうなの? 戦況は僕の方が有利に見えるけど」
「そっちこそ適当なことほざいてるんじゃないわよ……ほら、早くその子をこちらに渡しなさい」
「『その子』って……まさか『これ』のこと言ってるの? この、もう絶対動かないのに?」「笑うな!! 虫唾が走る……!」
「へぇ? ……面白いね」彼は私の目を見て嘲笑すると、右手に持っていた武器を静かに置いた。一方私だけ持ち続けているのはアンフェアかと思い、それに続いて置く。
「何? 突然話し合いで解決する気にでもなったの?」
「……まぁ、そんなところかな。僕も、無意味な戦いは嫌いだしね」
「……その子と私は、運命共同体なの。もうすぐでひとつになれるの! だからお願いだから……もう私の邪魔をしないで!」
「『運命共同体』だなんて、そんな大袈裟な」
「あんたいい加減に……!」
「ほら、君が油断してるから、僕に取られちゃうよ」
しまった、彼に気を取られていて注意を逸らしてしまっていた。はっと目をやると、赤に染まった姿が私の目に入ってきてしまった。私が! あんな奴の挑発に乗ってしまったせいで!
「まさか、隠し球を忍ばせていただなんて」
「だからそれ置かない方が良かったのに。君は昔から本当に素直だね、利用させてもらったよ……どう? 辛いでしょう?」
じわじわと広がる赤い染みに、救えなかった自責の念が重く私にのしかかる。
「……確かに、辛いのは嫌よ。今まで散々な目に遭ってきた。でも……あなたも詰めが甘かったようね……!」
「……何?」
再び置いた武器を手に取る。この勇気は、全てこの日の、この時のためだったのだ。
「どんなに辛くても! 私は必ず乗り越えてみせる! あんたがどんなに卑劣な手を使っても、私は! あんたにだけは絶対に負けない!!」
「……そう。僕にまだ怒鳴り散らす気力があるんだね」
彼もやれやれと、武器を取って構えの姿勢をとる。「でも、一体いつ辛いのを克服したって言うんだい?」
「……先週、一緒に行った回転寿司……」
「……君は、『ワサビ抜き』を頼んでいなかった!!」
それと同時にバッと二人の右手が動き出す。
『残り一個の餃子』戦争の、最後の火蓋が今切られた。
最終決戦 @fluoride_novel
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