第16話【ナツ ノ ヨル】

 あらすじ。第三者にとっては美少女ボジの二人(ポンコツ&宿敵)と祭りを回ることになりました、いぇーいいぇーい。

 で、今の状況をこれまた簡素に、わかりやすく説明しますと!


 「おい魔王、機械っアイツどこいった?」


 「奇遇だな勇者よ、吾輩もそれを聞こうとしたところだ」


 えー、あのバカがいなくなりました!はぁ、そうだな、そうだなぁあー……


 「よし、○そう」


 「待て待て待て待て。相棒ではなかったのか!」


 「いや、そりゃそうだけど……もういいかなって」


 「もういいとか無いからの!?人も魔族も一度の命なのじゃぞ!!」


 あれ?俺って最初のほう協会で蘇生されてたような気がしなくもなくもなくね?というかしてたよね?……あっ、これ気にしちゃいけないところだ。危ねえ消される。


 「まあ、冗談はさておきアイツ探すか」


 「そうしよう。あまり長い間、勇者となんぞ話しとうないしな」


 一つ、とても強い風が吹いて、沈黙。睨みを利かす2つの眼光。


 「……ハハッ。話広げたくせによく言うじゃねーかあ?」


 「貴様も、自分から話し出しておいてよく吾輩に責任をなすりつけられるのお?」


 睨みつつ、牽制しつつ、互いに瞳の奥に煌めかせる闘志と深淵を覗く二人。そして___その闘志に焼かれたのか、顔を赤らめ目を逸らす二人。……は?何こいつら?


 「は、早く見つけるぞ!?魔王と一緒じゃ空気も悪くなるわ!」


 「そ、そそうか!吾輩は貴様の顔なんぞ直で見たくないからな!さっさと機械を探すぞ!!」


 そして二人は夏の夜に消えていく、ついさっき通った強風が、その探しもの【機械っ娘】であることとも知らずに……。


 「あっ、そうだ魔王リンゴ飴いるか?」


 「ふむ、貴様からの供物として受け取っておこう」


 「は?施しだが?というか溶けそうだから早く持て」


 こうして夜は、また一層深くなっていくのであった。




《一方で、機械っ娘》


 「ニューマスター、及び魔王が迷子になりました。おめでたい奴らです」


 五指に団子を持ちそれを刹那にして食べる紫髪が一人……否、一機。彼女はそれを陶器のように白い指先で弄び、自身を囲むように現れた「それら」を見る。

 数は十六、緑の肌で片刃の刃物を握りしめた人型の生命体。それらの統率力は非常に高い。索敵能力に優れている機械っ娘がこうして円に囲まれているのがその証拠だ。……まあ、食べ物に夢中になっていたというのが主な原因ではあるが。


 「こちらのおめでたい奴らはですね。マスター曰く、こういうのを袋の鼠と言うそうです。猫を演じてみましょう、にゃーーーん」


 そして、十六人の一人、派手なドラゴンの刺繍が施された服を纏った青年が機械っ娘に歩み寄る。


 「お前さん、勇者の仲間やろ?悪いがこちとら姉さんにタマ預けとる身でな、姉さんの敵は全員殺すって決めてんだ。うで、お前さんも覚悟決めてくれな」


 「にゃん、にゃにゃんにゃーーーん」


 「……これから殺すって相手に言うことじゃねーが、その棒読みの猫を止めてくれ。気が散る」


 苦笑い、咳払い一つ、不敵な笑みに変わった青年の顔には、明らかな殺意が刻まれていた。機械っ娘の頭からはいつの間にか猫耳(鉄製)が生えている。


 「野郎ども、


 その言葉とともに、円は崩れた。十六の緑影が機械っ娘に飛びかかる。


 「おめでたい奴らは楽ですね、あちらから殺されに来てくれるのですから」


 機械っ娘は「にゃー」と啼く。その刹那、十五の緑影が森を裂いて飛んでいった。


 「ニューマスターは継承者ですし、魔王は何かと分かるやつです、殺したくないから殺せません。あなた方は初対面なので、殺しやすかったです」


 機械っ娘は、両手に団子を補充し、刹那で飲み干す。


 「言い忘れてましたが、マスター曰く【ロボット三原則】?なるものは搭載されていません。続けるならやりますが、どうします?」


 機械っ娘の無機質な瞳が見つめるのは、地面。そこに敷かれた木の葉の中で、特に平たい場所、そこが隆起したかと思うと泥だらけになった青年が出てくる。その顔は、さも降参とでも言いたげに笑っている。


 「……はぁ、いや。いいよいいよ、もうやらねえ、どのみちお前さんには傷一つ付けられそうに無かった。完全敗北さ」


 「あっさりと降参なさいました。そういう人は長生きするでしょう、知りませんが」


 表面上降参しても、隠した手は仕込み刀を握り気を伺う青年。その頬は白み、大量の汗を孕んでいた。そして、一歩踏み込むその時だ。


 「あなたの仲間は死んでおりません」


 機械っ娘が、不意にそう告げる。


 「この先には滝と湖があり、私はそこに入るようパーフェクトに計算いたしました。あなたの仲間は100%の確率で生きています。武器をおろしますか?」


 「関係ねえ、バレたんなら選択肢は一つさ」


 月夜の下、狂気を宿した青年が、腰から引き抜いた壺を掲げて叫ぶ。


 「さあ、!」


 「ふっ、そうくると思ってました。食料調達はお任せください」


 ……えー、コリン族長が気にしていることその1「ゴブリンは知能が少し(?)低い」!!!

 勇者が気にしていることその1「相棒が単純にバカ」!!!


 こうして、RPGあるある奇襲イベントは、機械っ娘と襲撃者たちが楽しく宴会して終幕いたしたのでした!意味不だね!うん!

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