第12話【オリ カラ スタート】
【コフリン村:推奨レベル6】
唐突ですが、牢屋の中からこんにちは。最初の村一歩手前でゴブリンに捕まったユウシャです。
「スリープモードを解除したら両手両足拘束されて牢の中。……ユウシャ、流石にそれは引きますよ」
「俺も同じ状況だろうが!?なに勝手に加害者に仕立て上げてやがる!!?」
どうやら俺は犯罪者としてのレッテルを貼られてしまったらしい、なんと悲惨な運命だろうか。嗚呼、世界は無情なり……。
まあ、それはおよそ冗談のようなものだろうから気にするまでもないかな。機械っ娘の表情は動かないが確信できる、なんたって最初の仲間なのだから!
「……なるほど、そういうことですね」
機械っ娘はなにかに納得いったご様子。何にかは分からないが、きっとここからの脱出方法あたりだろう。
「ユウシャ、あなたは本当に変態ですね」
…………はえ?
「被害者と同じ状況に陥っているフリをすれば加害者だとはバレない、などという手口は古代より推理小説で飽きるほど親しまれてきた内容です。それに私が気が付かない訳がないでしょう?」
「いや、いやいやいやガチだって!信じてくれよ俺とお前の仲じゃねーか!!」
「記憶媒体曰く、出会ってまだ一週間も経って居ないのですが?」
くっあぁ、フラグが圧倒的に足りねぇ!?本当になんでこれほどまでに不信を買ってるんだよ、俺なにか悪いことした!?思い当たる節なんて……
1.機械っ娘を破壊
2.証拠隠滅未遂
3.感動の再会に水を差す
……ありましたわ。本来信頼が置かれるはずが無い行動、してましたわ。
「誠に、申し訳ございませんでした」
謝るしか、無い。今回なにもしてないけど、なんかもうとにかく謝りたい。本当に申し訳ない。
「……ニューマスター」
大きく酸素を補給し、すぅと吐いて、無表情な機械っ娘が冷徹に言葉を紡ぐ。ミスリルの管が織りなすその
「冗談です」
…………分っかりにく。
先程までの神経衰弱もどこへやら、なんかもう脱獄とかどうでもいいからこいつを一発殴りたい。
「ニューマスター、私は観コ……もとい周辺偵察がありますので、先に失礼致します」
「いま観光って言いかけなかったか!?というか、この枷は魔法封じの特性があるから、魔法タイプのお前じゃ外せないだろ」
……と、言った次の瞬間には耳を割る金属音。もちろんそれは機械っ娘の手枷から出た音で、出したのも機械っ娘、更にいうと外れた枷が跳んで行った先の壁からガラガラガラと何かが崩れる音がしてしまっている。ゴリラかよというツッコミは通常ボケ側への失礼だが、この場合に関してはゴリラ側に対しての失礼に当たるだろう。まさに規格外の怪力だ。
「私の筋力ステータスは、53です」
「フ○ーザ感出したいからって嘘はつくな!?最低でも200は超えてるだろが!!」
全く、何なんだこのチート機械は。破天荒というか破壊神というか、最早お前がユウシャやれって感じだよ。
……それでいて俺の方の枷は外さないんだから、性格悪いよな。
「一つ質問なのですが、魔法雑魚のニューマスターがどうして魔封じの特能に気がつけたのですか?」
「あぁ、それはな」
牢屋の外を指差して一言。
「アイツが教えてくれた」
見張りのゴブリン、ゴブミチさん54歳。人当たりがよく話し上手だが、酒癖の悪いおっさん。ちなみに枷について聞いたときはシラフだったので、見張りとしてはこれ以上ないほどに人選ミスである。あと、さっき肉と麦酒持ってきてくれた。優しい。
「そうだ、ゴブミチさん枷外してくれません?」
「いやぁ、流石にそりゃだめだぁ。おいらだってこれ仕事だからねぇ」
「そっすか、あざす」
当たり前だが枷は外してくれないようだ。仕事は給料以上、ただしやるのは持ち場だけ、というのがゴブリンの業務形式だそうで、それに従うゴブミチさんは脱獄以外なら大体スルーしてくれる。ちなみにゴブリンの生き様は【イノチダイジニ】となっていて、それ故かゴブミチさんは機械っ娘を笑顔でスルーしていた。おい、それ許容しちゃったら大体通っちゃうだろ!?
「……おい、ユウシャはいかねぇのかい?」
「いや、行けるもんなら行ってるんだけどね、生憎ステータスが低くてさ」
「ステータス?いや、必要なのはそこじゃなくて」
ゴブミチさんはほとんど閉じっぱなしの目を凝らして、狭い隙間から俺を凝視した。
「おいらの鑑定眼には、金属破壊系のスキルがばりばり映ってるのだけども?」
「……あっ」
手錠、粉砕。
「で、どうします?戦いますか?」
「かぁ、まあおいらも歳だし、【ヒノキノボウ】とはいえ武器持ちに敵う気はしねぇなぁ。つーわけで、通りな」
「……」
10Gと一緒に貰える【ヒノキノボウ】がやっとまとも(ハリボテ)に使えたのだが、どうすればいい?
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