第9話【キンキュウ カイギ】
重大事件が発生した。
俺はそれだけ言うと、機械っ娘をパン屋のバルコニーに促して、如何にもなポーズで神妙な緊張を体現する。正直、意味のわからないポーズとも言い換えられるものだ。ちなみに機械っ娘は欠伸をしていてとても眠そう。おい、機械。
「で、事件とはなんですかニューマスター?」
相変わらずの無機質フェイスで対応する機械っ娘、しかしその僅かな違いすらも俺には分かる、これは面倒くさそうにしている顔だ。間違いない、俺といるときはいつもそうだもん。
「あゝ、心して聞いてくれ。まず前置きとしてーーー」
「いや、そういうのいいんで。早くおっしゃりやがり下さいませ」
ヤバい、この娘コワイ。急に口調変えるじゃん。というか機械なのに寝起き悪いな!?
「……魔王城までどう行けばいいのか、全くもって分かりません」
結局、圧力に屈して普通に言ってしまった。情けないユウシャだよ、全く。
「は?」
うぐぅ。怒られる怖い。
「てへぺろ」とか言っとけば許されるかな〜、とか思っていた3秒前の自分を殴りたい。いや、おそらく今から行われるのは打撃なんかよりも余程凄惨な攻撃であるのは確かで……。
「そういうことは早く言ってくださいニューマスター!?ちょっと待って下さい、魔王城への適切ルートを現在算出中で……あっ行きたい場所等がございましたら今のうちに言っておいてください。2回目はありませんので」
……あれ?なんか、急に優しくない??
「もしや、ツンデレ?」
「ぶち殺がしますよ?」
「ごめんなさい!!?」
い、いやでもまぁ怒られなくて良かった。言葉遣いは強くても良いやつなんだろうな、とどことなく思えるよ。うん、まぁさっきの会話で腕どっかいったけど。てかせめて止血して!?
「……ルート算出、決定しました」
完了ではなく、決定。機械っ娘の独断にて選ばれたルートですか……空の旅とか無いといいなぁ。
「では、まず天空都市を目指しましょう!」
「無理」
早速かよフラグ回収早すぎ!てかそもそも天空都市って何?ラ○ュタですかそうですかんなもん異世界にはねぇよ!?……いや似たのはありそうだけど。
てか、機械っ娘はまぁなんでもありで行けそうだけど、少なくとも俺は空飛べねぇぞ。どう考えても無理!
「冗談です」
……冗談だったらしい。分かりにくいよ、本気にしちゃったじゃん。
「さて、改めて最初の目的地ですが」
トゥルルルル…。という効果音を口を動かさずに発する機械っ娘。彼女はどこからともなく取り出した電気式ルーレットを回して、ケーブルが届くギリギリにてダーツを構えていた。おい、まさかそれで決める気じゃないだろうな?
「シュ、と。はい決まりました目的地は【コフリン村】です!」
「やりやがったぁあア!?」
「ちなみにコフリン村はゴブリンと人間が共存する村です。棍棒使いが多いので、もしかしたらそのヒノキノボウの有用な攻撃法が見つかるかもしれません。良かったですね、わら」
……最初に行く村としては最適なのだろうが、なんだろう、この納得行かない感じは?というか「わら」って、なんで平仮名なんすか機械っ娘さん?ちょっとカワイさ見せんじゃねぇ!?
「……」
10Gと一緒に貰える【ヒノキノボウ】がやっとの出番なのだが、どうしたらいい?(嬉)
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