第8話【キカイ ト ユウシャ】
【王都:パン屋】
暖かでどこか懐かしい空気が売りの我がパン屋のパルコニーにて現在、なにやら不穏な空気がだだ漏れていた。いや、まあその原因は分かってはいるのだが、どうしてこうなったのかについては毛ほども分からない。
そこでは機械っ娘が、なにやらエネルギー弾らしきものを空中に創造していた。およそ術者の2倍はある、大きなものだ。
「ニューマスター、新任祝です受け取って下さい」
ほとんど動かない表情が、完全に無に固定されていた。一度壊した俺が言うのはなんだが、これ、死ぬな。
……まあ、教会で蘇るし大丈夫だろう。
「あっ、言い忘れてましたけど、この【
チート性能、乙。積みですねこれ!!戦えってことすか!?
!戦闘開始!
さて、唐突な戦闘。勝算は五分五分といったところだろう。
まずこの勝負、機械っ娘のエネルギー弾がかすりでもしたら俺の負けだ。それだけ聞くとすっごく分が悪い。しかし俺には奴への特攻スキル【ゴールド・ブレイク】がある。前回の悲惨な事故(?)によりレベルアップしたわけだから、本気でヒノキノボウを振れば一撃で倒せるだろう。というかそれで倒せないと、死ぬ。
「では、ニューマスターのテスト、もとい葬式を開始いたします」
「主人公補正って……知ってるか?つまり俺は死なないのだよ!絶対に!!」
格ゲーキャラの入場台詞みたいな喋りだしになってしまったけど、そこは気にしてはいけない。今はこの、60分の1秒を感じ取ることだけに専念しよう。
機械っ娘が腕を降ろすのが先か、俺が駆けるのが先か、緊張の空気がその時ーーー崩れる。
突如として響いた、轟音によって。
その音は丘を越えた先の山、その鉱山付近から不規則に鳴り響いている。まさか!?と思い横を見ると悲しげな顔が一つだけあった。
「始まりましたね」
機械っ娘は手を合わせて、目を閉じる。
「おやすみマスター。おやすみ、みんな」
その光景に、俺は一人取り残されていた。何が起こったのか分からなかった、ではない。分かりたくなかったんだ。だって、考えてみれば、そうだ、きっとあの鉱山でたくさんの命が消えた。きっとあのおじいさんも消えて、そして眼の前のこの子だけが、一人残された。
「さて、行きますよー」
と、シリアスに浸りかけた俺に向かって軽い言葉が投げられる。機械っ娘から。
「?」
「分からない顔をしないでください。これが一番合理的なんです」
……情薄なのだろうか?昨日のを見た感じそんな気はしなかったけど、親不孝者なのか?
「失礼そうな顔してますよ。……私はただ、マスターへの恩を返すためには、頼まれたとおりニューマスターに付いていくのが最善と判断したのみです」
機械っ娘は言い終わるよりも早く、不自然に顔を俯かせた。合成繊維の艶があるフードまで被っていて、何かを隠しているようにも見える。……すらーいでぃーんぐ!よし見えた……って、泣いてる!?
「……見ましたね」
「はい」
機械っ娘が手を振り下ろす。すると虚空が裂けて内から黒い光が舞い降りた。あっ、これヤバい。
ァン チ テ―ゼ
「【偽りの黒光】」
「ピギャぁ!?」
【王都:ゴトー教会】
「オオ ユ(ry」
「……」
10Gと一緒にもらえる【ヒノキノボウ】が魔法に対抗できないのだが、どうしたらいい?
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