第6話【カネ ナイ】

 朝起きたら、スキルが増えていた。


 【ゴールドブレイク】

 ※ゴールドを失い続けたものが得るスキル。金属系統の魔物に対して与えられる物理攻撃が大幅に上昇する。(常時発動)


 【廃鉱山:推奨レベル8】


 とりあえず、来てみた。どうせ何かしらの理由でまた失敗するのだろうと解っていながらも、来てしまった。別にパン屋の仕事が嫌だったとかではない、来たかったからきたのだ。嘘ではないよ?ホントだよ?


 ギギギ ギッ


 スクラップドール ガ アラワレタ !


 出た、この地域のトラウマモンスター。長く語るわけでもないが、遥か昔に造られたこの鉱山の労働力として投入された金属製万能ゴーレムでありPR活動も兼ねて可愛らしい少女の見た目と純真な精神を持って創り落とされたやつらなのだが鉱山の衰退にともない修繕する技術者がいなくなったので身体は錆や故障で動かない状態へと変貌し創られた心は永遠に苦痛と生き続けるという地獄に落とされた人形モンスターで今は過去の面影などなくただ辛うじて人の形を保っている存在だ。ちなみに人を襲う理由は解明されていない。それは怨みかもしれないし、もしくは助けを求める悲痛な叫びかもしれないのだ。


 ・・・・・・何はともあれ心が痛む。


 「お、おりゃ」


 まあ、どうせ倒せるわけないしな。ハハッ。


 スクラップドール ニ 115 ダメージ

 残りHP0


 ドガシャン ガララ


 EXP30 G10

 レベルアップ 3→5 !


 ・・・・・・レベル、アップ?

 つまり俺はこの人形ひとがたを、壊したのか。心ある少女を殺したのか。・・・・・・腹切らなければ。


 レベルアップ報酬【スキル:焔霊フレイム


 焔のたま、なるほどこの状況に合いすぎて辛い。多摩川はないけど近くの小川に身を投げよう。


 ガチャ ガラッ


 あっ!足に当たってしまった、回復薬がぶ飲みして死ななければ・・・・・・。いや、せめて自ら手を下したこの子だけでも弔おう。


 ーーーそうだ、確か街が一望できる丘があった。変なおじいさんしか住んでいないから迷惑にもならんやろ。知らんけど。


 では、逝こう。


 【ナモナキ丘:推奨レベル5】(墓地予定地)


 ・・・・・・ちょうどこの辺りが見晴らしいいな、ここにしよう。


 ガ ガガガガッ


 あれ?なんか運んでいる間に更にボロボロになったか??いや、いま気にすべきところはそこではない。辛かろう、すぐに楽にしてやるから。


 「お、おう。そこの人ぉ」


 どこかから声がした、まさかーーーお前、生きていたのか!?


 「こっちじゃよ」


 あっ、後。・・・・・・なんだ、丘のおじいさんじゃないか。


 「君ぃ、それをどうするつもりじゃ?」


 それは、聞かないでほしい。俯いてしまう。


 「弔う」


 単調な声で、そう言い放つ。


 「え?なんて??」


 「・・・・・・」


 流石に墓穴(二メートル下)の中から話すのは無理があったか。よいしょっと、ふう出れた。


 「弔う」


 「あ、やっぱりそうかい。そうかいねぇ、だったら一回その子を儂に預けてはくれんか?」


 は?

 俺は、なんとも素晴らしいぐあいに呆けてしまった。その隙に、略奪を受けてしまう。よし、このジジイ殺そう。


 「なに怖い顔しとるんじゃ、全くユウシャらしくないのぅ。まあ、明日きたまえ、良い物を見せてやるから」


 そう言うとおじいさんは、いやジジイは家へと帰っていく。追いかけようと駆け出したときには、恐らく煙幕であろうモヤがあたりに立ち込めていた。そして、晴れるとそこは王都の裏路地だった。何を言っているのか分からねぇと思うが、俺も分からねぇ。


 ・・・・・・とりあえず、明日またあの丘へ行こう。


 「・・・・・・」


 10Gと一緒にもらえる【ヒノキノボウ】でいのちを殺めてしまったのだが、どうすればいい?

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