メディスンプレイス
風斗先生との練習と並行して、唯は様々なトレーニングを重ねている。
その一つがメディスンプレイスという場所に行って行うイメージトレーニングだ。これは凛が教えてくれた。凛はこんな事を言っていた。
「私は小さい頃から自然が大好きで、中学生の頃にネイティブアメリカンの本を読んで、その世界観が大好きになったの。だけど大人になってからそんな事は忘れてしまっていたわ。
唯が事故に遭って私が勤める病院に運ばれてきた時、その人が史也がよく話してくれていた風谷唯選手だって事がすぐに分かって、命が助かる事を懸命に星に祈った。心の底から祈って、唯が助かった時にあの世界観を思い出したの。
唯が退院してから、私は何度かネイティブアメリカンの教えを基にしたワークショップを受講したの。
その中で『セイクレッドサイエンス』っていう学びがあって、今の唯に話しておきたい事があってね。とっても奥が深い物だし、簡単に話していい物なのかも分からないけれど、少し聞いてほしいんだ」
「一番心に残っているのはFaithという言葉。信じる事っていう意味なんだけど、もっともっと深い意味があるの。純粋である事、ピュアである事、汚れのない気持ちで信じる事。古来の道に生きた最後のインディアンが残した言葉にこんな物があるんだって。
"faith is the most powerful force on earth."
"Faith は地球上で最も強い力である"っていうような意味ね。
私は今の唯からFaithの力を凄く感じているから、夢を叶える事が絶対に出来ると思うの。唯だけじゃなく、史也と風斗と私もFaithを絶対忘れずにやっていきたいと思う」
「そしてこのFaithこそが色んな潜在能力を引き出してくれるモノだと思うんだけど、とっても有効だと思えるイメージトレーニングのような瞑想を習ってきたの。
人は生まれた時に必ずひとりひとりに与えられるって言われているメディスンプレイスっていう場所があるんだって。そこは自分が好きなように想像して創造していく、何でも出来ちゃう一番好きな素敵な場所なの。
とってもリラックスした状態を作って、ゆっくりゆっくり自分が想像した小道を歩いていって、階段を降りてアーチをくぐった先にメディスンプレイスがあってね。
そこは肉体が切り離されたスピリットの世界。鳥になって飛ぶ事も、魚になって泳ぐ事も、木や草と話す事だって出来る。何のしがらみも無く、正にFaithな自分でいられる所。
ここで自由に遊んじゃえばいいの。そしてまた元来た場所に戻らなきゃいけないんだけどね。
メディスンプレイスで本当にリアルに想像創造出来れば、現実の世界でも同じ事が起こる事があるんだよ。
それから、メディスンプレイスでは、自分ではない誰かを連れてきてヒーリングする事も出来る。私は風斗が生まれて命が危なかった時にそれをやった。
実は何回か唯を連れていった事もあるの。私が治してあげたりする事は出来ないけれど、大いなる力と唯との架け橋になるイメージかな。私は全然未熟で、ヒーラーなんかには成れてないけど、これからもここで唯の夢のお手伝いを出来たらいいなって思ってる。
ただそういう場所があるんだって事を知ってるだけでも楽しくなるけど、イメージトレーニングのようにしっかり実践したかったら、私の分かる範囲でやり方教えてあげるからね」
「私達が日常持っている顕在意識と違って、表に出てこない潜在意識は、現実とイメージを区別できなくて、あらゆるものを現実として受け止める性質があるらしいの。
だから、唯の中にまだまだ沢山眠っている潜在能力を引き出すには、なりたいイメージを鮮明に浮かべてあげる事がとっても大切なんじゃないかな」
唯は凛の話をとても興味深く聞いた。
そして思った。生まれた時に一人一人にそんな場所が与えられているなんて想像するだけでも嬉しくなる。
現代社会で上手く生きていこうとすると、知らず知らずのうちに分厚い衣を沢山身に付け、様々なブレーキを掛けてしまう。そんな事で、眠ってしまっている潜在能力が引き出される事無しに、大切な自分の一生が終わってしまうなんてつまらない。
Faithな自分になって、やりたい事、なりたい物、良いイメージをどんどん想像、創造して遊んでいけば、知らず知らずのうちにブレーキが解除されていって、潜在能力がどんどん引き出されていくのかな?
それから、凛はちょっと恥ずかしいそうにこんな事も言っていた。
「あと一つ、ちょっとドキッとした事があったの。
このワークショップ中に『自分のスピリットガイドに出会う』っていう瞑想みたいなのがあったのね。スピリットガイドは自分を守ってくれたり、ガイドしてくれたり、ティーチャーになってくれたり、必要な時に自分に付いてくれる存在。それは自分で作り出すんじゃなくて、無になって瞑想していく中で自然に現れる物らしいの。
私は、自分が好きなアサギマダラとかユキヒョウとかがスピリットガイドだったらいいのにな〜と思って瞑想したんだ。
だけど現れたのは、目だけ付いている真っ黒な丸い塊みたいな物だった。これが私のスピリットガイドか〜ってちょっとガッカリだったな。
しばらく経ってから、私は復習の為に、その瞑想を全体図に書いてみたのね。その時はスピリットガイドの事はすっかり忘れてたんだけど。
で、私と唯もメディスンプレイスで遊べるように、二人のスピリットのイメージを描いてそこに入れてみたのね。スピリットならこんな感じかな? って思って書いてみた。
書いて眺めている時にハッとした。私が何となく書いた唯のスピリットが、まさにワークショップの時に現れた私のスピリットガイドとそっくりだったの。私は自分のスピリットガイドが一気に好きになったよ。
私は唯を通して、看護師としても人としても、沢山成長させてもらってる。
初めて会った時から、この人は何でこんなに気になって、沢山夢にも出てくるんだろう? って不思議に思ってたんだけど、きっと唯のスピリットが私のスピリットガイドだからなんだって思えて、少し納得したの。
変な風に思わないでね。恋人とかっていう関係じゃなくって、でもそういう関係で結ばれてたとしたら、何か嬉しいなって思っちゃった」
唯は凛がそんな話をしてくれる事がとても嬉しかった。
瞑想のやり方を色々教えてもらって、メディスンプレイスに通って毎日思いっきり自転車に乗った。
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