第42話 死人革命
「何者だって? 見ての通りしがない骨董屋の店主だぜ?」
俺は榎木に向かって両手を広げてみせた。
「・・・」
「うん、まぁたまに探偵の真似事してみたり」
「ここら辺りじゃ、不老不死探偵で通ってるんだって?」
「とんだデマゴーグだよ。まさか
「探偵業が趣味のしがない骨董屋が、不死の秘法を追って、死体の山と港の大惨事を起こしたってのかい? そして相手は大国ロシアで暗躍する怪人ラスプーチンときたもんだ。大衆小説の主役を張れるぜ?」
「主役だなんて、褒め過ぎだよ」
「褒めてない」
「あ、そう」
「・・・金華秘書。それがあんたが追ってた書名だよな?」
「雨夜さんがなんかいってたのかい?」
「いや、近所でビラ配ってたろ。探してます! って」
あ、そうだった。春日が配ってたよね。今考えてみればかなり大胆だよな。
「オレなりに調べてみたよ。とんでもない事に首突っ込んでたんだな。大陸で数千年繰り返されてきた死人の軍団と革命の歴史」
凄いな。雲爺さんと同じこといってやがる。よくそこまで辿り着いたもんだ。
「まじめなだねぇ」
「茶化すなよ。これでも情報集めるのに苦労したんだ」
「・・・榎木さん、あんたもしかして情報屋なのか?」
そうか、この微かな気配、小十郎のものに似ているんだ。
「へぇ、勘も鋭いんだな」
「しかも、俺が知ってる奴より、そうとう上のモンだ」
「詮索はその辺にしてくれ」
妖孤を配下に持っているとなると、雨夜さんは、そのレベルの情報に接触出来るってことか。随分面白いことになってんじゃねぇの。
「どうも、ちと長居しちまったみたいだな」
榎木はそういって、ソファから立ち上がった。
「もう帰るのかい?」
「ああ。茶、ご馳走様」
俺の名残惜しさを無視して、榎木は店の出口へと向かった。
「あぁ、そうそう。もしかしてラスプーチンは、金華秘書を使ってロシアで革命でも起こすつもりかもしれねぇよなぁ?」
引き戸が開けられ、冷たい雨の気配が忍び込んできた。
榎木の問いに、俺は沈黙で答えた。
「世界がまた大きく動き出すかもな」
そういい残して、榎木二郎は去っていった。
はっ、なんだそりゃ。俺の知ったこっちゃねぇぜ。
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