第40話  寿司と消失

「さて、すっかり夜になっちまったな。景気付けに寿司でも食ってくか!」


 晴れて取り調べから解放された俺たちは、警視庁の前に集った。


「いいっすねぇ、寿司! 寿司なんていつ振りだろう」


 春日が歳相応のはしゃぎっぷりを見せる。


「スシ、いいね」


 玄女は片言の日本語で精一杯食べたさを表していた。


『スシ? なんだそれは』

『光はもう少し言葉を覚えろ。それでも外交官の一員か?』

『君は僕を侮辱する気か? だいたいこうやって無事警察から解放されたのは、誰のお陰だと思っている?』

『俺の交渉力のお陰に決まってんだろ』

『いやいや僕の外交特権の力だ』

『まぁまぁ、いじゃないかこうして出てこれたんだから』

『そういや玄女は警察になんて話したんだ?』


 俺は玄女に訊いた。


『私か? 私はただひたすら言葉がわからない振りをしていた』


 うわ、コイツ一番えげつないな。

 あんまり触れずにおこう。


「春日は?」

「え、なにがっすか?」


 ああ、すまん。大陸の言葉で話してたんだ。


「おまえはどうやって警察の取り調べ切り抜けたんだ?」

「オレっすか? オレはずっとラスプーチンが滅茶苦茶危ない最低のクズ野郎だって話しまくってました」


 どんだけラスプーチンのこと嫌いなんだよ、ていうかいったいナニされたんだよ。


「そういう師匠は、警察になに話したんすか?」

「俺は、正直に話したぜ? 金華秘書のこと、ラスプーチンのこと、死人のこと」

『金華秘書のこともはなしたのか』


 玄女がいった。


『仕方ねえだろ、それを外したら話が通じねぇし、なにより俺たちの無実と正当性を証明出来なくなっちまう』

『そうだな』玄女は少しだけ考え込んだ『そして、金華秘書はラスプーチンと共に消えた』

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