第38話  めくるめく大惨事

「さて、後始末といくか」


 春日、玄女、光の三人が船のデッキから飛び立ったのを見て、俺は気合を入れた。

 この船ごと死人どもを海に沈める。

 どこに潜んでるかわからねーが、この際ラスプーチン諸共な。


 いい感じで死人共が集まってきた。

 俺は三振りに複製された荼毘丸を三本の腕で纏めた。

 三本の刀身から、猛烈な豪火が立ち昇る。

 更にもう一本の手で竜巻の術式を召喚し、発動させた。

 豪火はたちまち渦巻く劫火の柱となって、天を突く。 

 船のデッキに群がっていた死人は、次々と火炎に呑まれていった。


 そろそろ仕上げた。


 竜巻はいよいよ勢いを増し、デッキを覆い、船の横幅を超えて広がり、海水まで巻き上げる昇龍のような水の巨柱となる。

 やがて竜巻は船さえも浮き上がらせ、船体を天にまで引き上げていく。

 ある程度まで浮いた船は、中央から真っ二つに折れ、竜巻からこぼれ、海面へ落ちていった。


 地鳴りのような轟音と共に、空中へと吸い上げられていた海水と船の残骸が海へと落下していく。

 泡立ち波打つ海面、埠頭へと溢れる海水。


 おっと、悠長に眺めてる場合じゃない。ここまでド派手にやらかしたら、さすがに警察が黙ってないだろう。

 俺は落水が落ち着くと、周囲を見渡して、春日たちを探した。


『急いでここからずらかるぞ!』


 玄女と光は既に了解していたようだ。


「え、どうしたんすか? まだなんかあるんすか?」


 側に着地した俺に、春日は興奮した様子で訊いてきた。


「バカ、警察がくるんだよ。倉庫ぶっ壊して、竜巻起こして船を真っ二つにしたら、さすがに逮捕だろ」


 四人で走り出し、建ち並ぶ倉庫の角を曲がると、そこには馬車の列と警官隊が、道を封鎖していた。


 うわ、最悪。

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