第32話 そして戦いの火蓋は切られた
『私の目的である“金華秘書”は既に手に入った。では、地獄に落ちろ』
ラスプーチンは周囲にいた取り巻きたちをけしかけてきた。
金華秘書が本命? 不完全な不死で満足って、いったい用途はなんなんだ?
『来るぞ!』
隣の玄女が身構える。
『こいつらは既に術にかかっているのか?』
俺は玄女に訊いた。
『恐らく。気を付けろ、噛まれることで術が感染するぞ』
その辺はゾンビと似たり寄ったりなのね。
ていうか不死の俺が感染したらどうなるんだ?
うん、面倒ごとは後、後。
『アイサー』
早速、五人の男達が襲い掛かってきた。
常人よりも流石に動きが速い。
俺はピースメーカーを早撃ちで四発、正面の奴に打ち込んで、取り敢えず後方に吹き飛ばす。
その間に二人が間合いを詰めてきた。
この動きと距離だと、銃は不利か。
チラリと玄女を見れば、あっちは素手で二人とやり合うつもりらしい。
それならば、と俺は刀を手に召喚した。
跳びかかって来た奴をかわし、大口開けて向かってくる男の口腔へ刀を突き刺す。
すかさず口から刀身を引き抜き、攻撃をかわしつつ、もう一人の首を切り落とした。
気が付けば、玄女も二人目の首をへし折った後だった。
コワ。どうやってやったんだよ。
そして最初に銃弾ぶち込んでおいた奴が起き上がって向かってきたところを、顔を横一文字に両断した。
さて、後は・・・と思ったら、ラスプーチンの奴がいない。
あいつ逃げやがったな!
『トキジク!』
背後から光の鋭い呼び声がした。
振り向けば、なんと周りにうずくまっているだけかと思っていた阿片中毒者たちが、光と春日に迫っていた。
クソ、あいつらもゾンビにされてんのかよ。
しかし既に阿片に侵されているからなのか、動きが非常に緩慢だ。
数はざっと二十人ほど。
一気に片付けてやる。
『トキジクは奴を追え!』
玄女が突然俺にいった。
『は?』
『ここは私たちが引き受ける。安心しろ、愛しのカスガ君は命に代えても護ってやるから』
俺は逡巡し、玄女と視線を絡ませた。
この場は信じてやるか。
金華秘書を野放しにも出来ないし。
『チッ、わかったよ。ここは任せた。あと、愛しのなんて恥ずかしいこといってんじゃねーよ、バカ』
ラスプーチンを追う前に、一瞬立ち止まって背後に目を遣る。
春日は既に椅子の緊縛から解放されていた。
理由はわからんが、アイツはどうやら「拒絶」の力を使えないらしい。
ま、しかしそれでも玄女と光がいれば、コレくらいの数のゾンビ、問題ないだろう。
あいつは大丈夫だ。
俺は気持ちを切り替え、逃げたラスプーチンを追い詰めることに意識を向けた。
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