第31話 意図的な説明不足
さーてさてさてさて、殺られたいヤツはどいつだ?
殺る気満々だぜー、俺は。何故だか。
『おい、光。悪いがコイツの世話を頼む』
俺は背後でまだ椅子に緊縛されている春日を指した。
『ふん、仕方がない。お前の指示でやるんじゃないぞ? 子供優先だからだぞ?』
光は何故かこちらを警戒するようにして、春日の元に寄っていった。
ようやく頭がすっきりして、辺りの状況を確認する。
穴の開いた天井から射す日射し以外は光源が無い、だだっ広い部屋。というか倉庫だな。
周囲にはどうやら人間が多数、うずくまっている?
そして微かに香るこの匂い、阿片か。
そういや先日襲撃した阿片窟に似てらぁ。
『トキジク、ここは・・・』
玄女も察して、周囲を見渡している。
『ご丁寧に脅迫状に署名してあったラスプーチンの名。おそらくロシア系だ。そして阿片や人身売買など最近闇社会でなにかと活発に動いているロシア人たち。いろいろ繋がってくるよなぁ』
『そのラスプーチンとやらは、どうも既に金華秘書で術を行っているようだな』
玄女が、首を刎ねられた死体を、険しい表情で睨んでいた。
『随分と盛り上げてくれるじゃねーかよ、おい』
『思っていたよりもお早いお着きのようで』
倉庫の奥にある金属の扉が引き開けられ、声が聞こえてきた。
『あなたがトキジクさんですよね?』
ロシア語を話す黒ずくめの男。
長髪も山羊髭も僧服も全て黒。
趣味悪ぅ。
『悪ぃな突然の訪問で。一応招待されたもんでね。とりあえず挨拶代わりに、贈り物です』
俺はすかさずピースメーカをぶっ放した。
しかしラスプーチンの側にいた男が、肉の盾となって銃弾を受けた。
肩の辺りに命中。
男はうずくまったが、まだ生きている。
『随分と愛されてるじゃねーの、見かけによらず』
『ご存知かもしれないが、彼らは私の手で不死となっているのでね。その分敬われているのかもしれないね。君と違って』
ラスプーチンは満足そうに笑みを浮かべた。
『トキジク、褒められたのか?』
玄女がいった。
『おまえロシア語わかんねーだろ』
『本当は君からも、不死の法を教えてもらうはずだったのだけれど、もうその気は無い様子だが?』
ラスプーチンがいった
『おいおい、拳銃ぶっ放してんだぜ? あるように見えるか?』
『非常に残念なことだ』
『ていうかさぁ、テメェ不死の大安売りぶちかましてんけど、ちゃんと不完全だってこと説明してあんのか? みなさん納得・・・』
『交渉決裂だな!』ラスプーチンは俺の言葉を遮った『君たちには、ここで生ける屍になってもらおう』
うわ、こいつ完全に駄目な奴だ。
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