第23話  道連れ

『では、頂こうかの。光、ありがとう』


 雲爺さんは、夕飯を用意してくれた孫の光に礼をいった。


『これはまた、美味そうではないか』


 玄女はいつもの如く、食い物を前にして目を輝かせている。

 うん、確かに美味そうだ。

 皇国人の俺や、北部出身らしい玄女に気を遣ってか、定番の広東料理が卓の上に並んだ。

 海老と野菜の餡かけ炒め、焼き豚の炒飯、焼売、鮑のスープ。


 さっそく食べてみた。

 うん、まぁ、なかなか、イケルんじゃね?

 なんて味わっていたら、隣の玄女は猛烈に料理を平らげている。

 食い物に関して、こいつに遠慮ってものは無いらしい。

 そうだ、今度春日に作ってもらおうか、支那料理。


『賛成だ。春日くんなら、美味しく作れると思うぞ』


 玄女が食いながらいった。

 俺、なにもいってないのに。

 本当に怖い。こいつの食に対する勘の鋭さは神憑っている。


『それにしても光、お客が来てるとはいえ、なかなか豪勢な料理じゃないか? 随分と奮発したようだの』


 雲爺さんが穏やかそうにいった。


『え、いや、そうですか? 普通ですよ。いつもと一緒です』


 なにもいうまい。ここは黙って静観するのが正解。


『そうなのか? こんな料理を毎晩食べているとは、羨ましい限りだ!』


 はい出ました。玄女さんの何も考えてない発言。


『そそ、そういう訳ではなくて』

『光は君たちの訪問を、いたく歓迎しているようだぞ。つまり、気に入られているということじゃ』

『ちょちょ、なにをいい出すんですかお祖父さん。玄女さんはともかく、この無作法な男は論外です!』


 なんだよ、清の武官とかいう堅物が、顔赤くして可愛いとこあるじゃねーか。

 ていうか玄女に“成敗!”とかいって剣向けてなかったっけ?


『まぁそういうことで、光も明日には東京に戻るんじゃろ? だったらついでに彼らと一緒に行って、金華秘書の捜索を手伝ってやりなさい』

『え?』


 ということで、明日、光を連れて三人で東京に帰ることになった。

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