第19話  不老不死探偵の助手 其の六

 ラスプーチンだっけ? 

 ここへは馬車で来ていらしい。

 今ならまだ捜せるかもしれない。どうする? 


 だけどあいつらは、正当な手続で金華秘書を手に入れたんだ。もうオレが出る幕は無いんじゃないのか?


 いや、玄女もいってた。

 金華秘書には、不完全な不死化の法が記されている。それはとても恐ろしい結果を生むって。


 どういう理由で手に入れたのか知らないが、この先を見届けない訳にはいかないだろ。

 それに、オレの直感がいうんだよね、あのラスプーチンって男は、相当危ない奴だってさ。

 そんな奴が、恐ろしげな不死化の法を手にしている状況は、控え目にいってヤバイってことだ!

 不老不死探偵の助手として、見過ごす訳にはいかんのだよ!


 オレは意識を集中する。

 去年の桃雛家での事件から数ヶ月、ただのんべんだらりと過ごしてた訳じゃないぜ。

 ちゃんと勉強して、訓練を積んでたんだ。もっとトキジクさんの役に立ちたいってね。


 オレの拒絶の異能の使い方。

 まずこの大地には重力っていう引っ張る力があるんだって。

 その重力のせいで、物は落ちるし、重さがある。

 オレはその重力を拒絶して、タンっと地面を蹴った

 すると体はすっと空へ向かって昇り始めた。

 屋根よりも、電柱よりも高い場所から辺りを見回す。


 既に日は落ちて辺りは暗い。


 いた、ラスプーチンたちは二頭立ての箱馬車に乗ってきたと聞いた。

 こんな場所をそんな馬車が走っているのは珍しい。あれに違いない。

 馭者がランプ点けていてくれて助かった。

 神田川の方へ向かっている。


 オレは拒絶の異能を弱め、地面に再び降り立った。

 次に馬車が居る方向へ駆け出し、重力をある程度拒絶して弱めながら思いっきり跳躍した。


 塀を越え、家々を超え、木々を超え、俺の体は大きく弧を描いて跳んだ。

 同時に目立たないように人々の視線も拒絶しておく。

 二種類の拒絶を並列して行使する。

 これはかなり精神集中が要るんだぜ!


 どこかの家の屋根に着地し、もう一度跳ぶ。

 大地のくびきからの開放。

 ひゃっほう!

 滅茶苦茶気分が上がるぜ!

 っと危ない危ない、集中集中。

 次に着地した道路のすぐ目の前には、ラスプーチンが乗っている馬車が停まっていた。


 どうやら行き交う馬車や人々に進行を妨げられているらしい。


 へへ、ようやく追い付いた。

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