第14話  隠された事実

 中庭に出ると、二人は壁を駆け上がり、宙を舞い、やがて屋根の上に出た。


 ち、しゃーねーな。


 俺も跳躍の術で助走の後、一気に屋根の上に飛んだ。

 

 上では二人が対峙していた。


『確かに私は義和団に参加していた。しかし後に連合軍へ転向したのだ』


 玄女は光に向かって冷静にいった。


『信じられんな。あんな大乱を惹き起こしておいて』

『ちょっといいかな、お話の途中だけど』


 俺は二人の会話に割って入った。


『誰だおまえは』

『誰だじゃねーよ。さっき爺さんの客だっていったろ。もう忘れたんかよ頭もしかして・・・』

『後にしろ。部外者は引っ込んでいてくれ』

『ああ? 部外者ならどっちかってぇとテメーの方が部外者なんですけど、わかってます?』


 俺は光に向けて銃を構えた。


『そんな玩具でやる気か?』


 光は俺を睨んだ。


『へっ、大人の玩具をなめるなよ?』


 俺の言葉に二人が異様な沈黙で答えた。

 え、あれ、なんか二人してめっちゃ俺のこと見てるんですけど、あ、もしかして、それ? ちょと盛大に勘違いしてない?


『いやだからそういうんじゃなくて、落ち着いて人の話を聞けよ。あんたは清政府の人間らしいが、国は義和団を事実上放任してたんだろ? ならどうして政府の人間であるあんたが義和団に加担してた玄女を敵視するんだ?』

『そ、それは・・・、仕方あるまい! 義和団は当初、国外勢力や文化の排外を目指していた。それは清政府の思惑とも一致していた。だから義和団を無下に出来なかったのだ』


 光は苦々しい顔で吐き捨てた。


『なーるほど。煮え切らない清政府の対応に業を煮やした諸外国勢力が徒党を組んで侵攻してきたんで、慌てて義和団粛清に方向転換した訳だ』


 光は答えずに黙って俺を睨んだ。


『私の転向はそれとは少し違う』玄女は静かに話し始めた。『光さん。あなたは紫禁城に立て籠もった義和団残党の殲滅作戦に参加したのか?』

『いや、僕は北京に入る前の義和団と闘った。その時のどこかであんたを見たんだ。鬼神の如き強さだった・・・。しかし物騒だな、殲滅とは。そんな作戦だったのか?』

『北京及び紫禁城への突入は列強八ヶ国連合軍だけで行われた。そしてその作戦内容は極秘にされた。あまりにおぞましく、八ヶ国連合はその事実を封印したのだ』

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