第6話 混沌と化する
なんと、ここ一か月ほど、まともに食べていないという。にわかには信じられない。だいたいそれでよく俺と闘えたもんだぜ。
「ほらよ」
そこに春日が三個の握り飯を追加で運んできた。
「おお! かたじけない、カスガどの!」
玄女は卓に置かれた新たな握り飯を、直ぐに頬張り始めた。
「しっかし、この人食べ過ぎじゃないすか?」
俺の横で、春日はボソリといった。
「金が無くてしばらくなんにも食ってなかったんだと」
「か、金が無いって、どうすんすか? 金にがめついトキジクさんが、よく黙ってますね」
え、なんか普通にキツくない? 俺への当たり方。
「お金の、話し⁉」
握り飯を食いながら玄女が喰い付いてきた。
「ああ、そうだよ。ウチの損害と飯だい・・・」
「ワタシ、ここの用心棒やる。おまえ、金華秘書探す。コレいいね!」
「え、あ、ちょちょちょっと待て、用心棒?」
「そう、ここにワタシ住む。昼も夜も用心棒する。サイコー! これでウィンウィンね」
俺の話を聞け、といおうとしたら、春日が物凄い剣幕で言い返し始めた。
「はぁ? なにいってんすかこの女ぁ! ここに住むぅ? ここにあんたの居場所なんて一寸もねぇっすよ‼」
「・・・アレ、もしかして、ワタシ、邪魔したか? 二人」
玄女はなんだかニヤニヤしながら俺と春日を交互に見た。
なにが邪魔なんだ?
「いやいやいやいやなにいってすかこの人ぉ⁉ なんか誤解してませんかね? オレとトキジクさんは、単なる師弟関係であって、それ以上でも以下でもないんすよね? まぁでも邪魔だと思っちゃったんなら仕方ないっすよねぇ、お引止めはしません、また会う日まで」
「まぁどこにも行くとこねぇってなら、しばらく住んでもいいかなぁ? 部屋も余ってるし」
「待て待て待て待て待てぇい⁉ え、今のオレの話聞いてました⁉ 完全にサヨウナラの方向でしたよね⁉ どうしたんすかトキジクさん⁉ いつものあの底意地の悪さはどこいったんすか⁉ だいたい文無し住まわせるなんて意味わかんないっすよ⁉」
コワイコワイコワイ、突然切れ散らかしてどうした春日。
「なんすか? その同居するのまんざらでもないみたいな態度は。デレデレしちゃって、あーやだやだ。やっぱりそういうのがイイんすね、トキジクさんは‼」
「うん、話、まとまったみたいだ。ヨロシク。ワタシ、精一杯用心棒するよ」
「勝手に進めんなよ話し! だいたい何でも屋まがいの探偵と助手と志那人女なんて、どっかでみたような取り合わせじゃないすか! ありがちですよありがち。これで師匠が白髪で、オレが眼鏡でもかけたら大変なことですよ⁉」
「なにいってんだおまえ」
「そうアル、心配ないアルよ」
「だからソレ⁉」
何故か話が混沌としてきた。
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