第4話  おまえに食わせるタダ飯はねぇ!

『うん、うふ、これは美味い。まさにいい塩梅だ』


 骨董店の奥にある厨のテーブルについて、女は今、塩むすびの三つ目にとりかかっていた。ちなみに菜っ葉の味噌汁と漬物も同時に食っている。


「あのぉ、トキジクさん・・・」


 食い物を準備した春日が、なにかいいたげに俺の方を見てくる。


「うん、みなまでいうな」


 なんか知らんけど、いきなり押しかけてきて店の商品破壊しながら俺を殺そうとした女に、飯食わせるってどういうことなのか、俺が一番説明して欲しい。


『まだ腹に入りそうだな。この握り飯をあと二個ほど、それに熱いお茶も貰えないか?』


 女は支那の言葉で訴えた。

 特大の笑顔で。


「なんて?」


 明らかに不機嫌な顔で、俺に通訳を求めてくる春日。


『おい女。いっとくが俺はタダで飯を食わせるつもりはねーぞ』

『私の名は玄女だ』


 隣の春日が脇腹を肘で小突いてくる。


「名前は玄女だってさ」

「名前なんてどうだっていいすよ!」


 おうおう、折角準備してた昼飯食われちまって、そうとうご機嫌斜めだね、少年。しかしここは俺がちょっと話聞いておくからさ、席外してくれよ。


「まぁまぁ、春日君。申し訳ないが、もう少し握り飯をお願い出来ないか?」

「たくぅ、どうなってんすか? これ」


 ぷんすか文句をいっている春日を、なんとか厨の奥に追いやった。


「あと熱いお茶も追加で~」

「はぁ? それくらい自分でやって下さい!」


 あぁあ、切れちゃったよ。


『で? あんたが探してるその金華なんたらっていう書物とはどういう因縁なんだ?』

『ふむ、そんなに知りたいかい?』


 玄女は訳知り顔で訊いてきた。


『違ぇよ。店壊した分と飯食った分ちゃんと喋れってことだよ』


 いい加減立場をわきまえろ。


『わかった。話してやる』


 だからさ。


『私が探している「金華秘書」には、不死化の法が書かれている。しかしそれは、不完全なものなのだ。もしそれに則って不死化の法を施せば、後悔することになるだろう』

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