第3話 訳アリ女
「この最低な守銭奴探偵!」
春日は、頭を撫でる俺の手を払いのけた。
いきなり罵られたぞ。年頃男子の気持ちはわかんねーな。なにせ俺は四百歳だから。
「そんなことより、あの女だ」
俺は警戒しながら壁の下にうずくまっている女に近寄り、銃を向けた。
『おい女、狸寝入りはもう終わりだ』
俺は支那の北方語で話しかけた。一番使い手が多い話語だ。
『・・・・、あれ、バレてたか』
女は何事も無かったかのように立ち上がり、支那風の長衣から埃を払った。
『おっともう暴れるのは止めとけよ。今度は容赦しねーぞ』
『ハッ、試しに撃ってみるかい?』
女は両腕を広げ、笑みを浮かべ誘ってきた。
なかなかに大柄な体躯だ。
『いい加減にしろ。それより俺を襲った理由を知りたい』
『おまえはどうやって不死になった?』
え、いきなり俺個人の核心を突くような質問きた。
『返答次第では、おまえを殺さなければならない』
あれ、なんで俺が逆に尋問されてんの?
『いやいや待て待て待て、どうしてそうなるだよ。俺の不死性はテメェに関係ねーだろ』
『私は「黄金華秘」の書を探している。心当たりはないか?』
随分迷惑な古書蒐集家だな。
殺されかけたんだけど。ま、死なねーけど。
『そんな本、ウチで扱ってねーよ。古書店を当たれ』
『その書には、不死化の法が記されている』
『あん?』
思わず反応してしまった。
なんだか厄介そうだな。
『おまえはそれを使って、不死になったのか?』
『残念、そんなんじゃねーよ。大体俺はこれでも四百年生きてんだ』
『そもそもおまえは本当に不死なのか?』
女は疑いの目を向けてきた。
『やかましぃ。どうでもいいから用事が済んだらとっとと出てけ』
俺は銃で出口の方を指示した。
それと、ちゃんと骨董と棚と壁の弁償はしてもらうからな。
しかし女は立ち去るどころか、その場にへたり込んでしまった。
『テメェ、寝てんじゃねーよ』
『すまん、腹が減って動けぬのだ』
『はぁ⁉』
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