第11話 けれどその先は

 それでも、私は紡ぐのだ。彼を絶望へといざなうその言葉を。勇気を出してその一言を。スカウトは勇敢であるのだから。


「私も同じ思いです」


 慎重に、なるべく短く思いが伝わるように選ばれた言葉が口からこぼれた。こぼれた言葉は彼には絶望を与え、唯ちゃん達には祝福を与えた。言葉は神だというがあるいはその通りかもしれない。社会に欠かせないものでありながら、社会における一番の障壁。


「……考えを変えるつもりはない。とりあえず今日は解散」


 彼は引き下がらなかったが時間の問題だろう。また一つ諦めて、大人になる途上に彼はいる。悲しい気もするけれど、成長だとすればそれは喜ばしいことに違いなかった。


 私の思いは届いていないようだったけれど、それでいい。


次の隊集会で恐らく彼は私を説得しにかかる。それが一番ローコストでハイリターンな選択だから。それまでに私は心に整理をつけて、説得に耐えうる状態にしないといけない。できるのだろうか、いや、しなければならない。次長としての責任と私の勇気とがそう告げていた。

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