1-2

(うぅ、…ダメだ…もう無理だ…)


この会場へ出発する2日前。最後の激励をもらいに、マークリースの教官のもとを訪ねていたコヤマ。

教官の最後の教えは、〝一つでもいいから完全攻略して来い〟というものであったのだが…


「こりゃぁ…どれ一つとして攻略できない…というか、うまく進んでるのかもわからん…」

進み方を間違えれば、同じ場所をぐるぐると回ることになる可能性がある。


『クエスト残り時間、60分です』


「クソ!───クソ!!───クッソオオオォォォ...」




4つのダンジョンすべてに〝手は付けた〟ようだが、それ以上に何もない。

ダンジョンの深層まで潜れた実感はない。

その上、入り口付近のエネミーに対し、効果があるかもよくわからない素手チョップを食らわせる事ぐらいしか出来ていなかったのである。


『クエスト残り時間、10分です』

アナウンスが無愛想に告げる。


「やっべ、行ったり来たりしてたらこんな時間になっちまった」


進展は───〝特になし〟 ただそれだけ。



(いや、待てよ…実は4番が意外と簡単だったりするようなオチは無いのかこれ)


ありません


「ぐはぁ」


疲れから、入り口付近のエネミーにさえ歯が立たなくなっていた。

HP、SPともに限界を迎えようとしていた。


『残り5分です』


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!もう無理だぁぁぁ……」

悲痛な叫びが、虚しくもダンジョンの壁に反響するのみであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る