第16話黒幕ってくろいよね3

朝になって目覚めたサンニアは、部屋の片隅で肩を寄せ合いながら眠る2人がいることに気が付いた。

「サリュウにアーシャ。どうしてここに?」

疑問に思いながらも、ベットの脇にある棚の上にある一通の封書が目に留まった。

気になって、手にとり、裏返す。「!!」

ジョゼと書かれた文字をみた瞬間に昨夜のことを思い出す。

「今日は遅くなります。明日まで待ってください」

は2人で決めた合言葉の1つだ。


今日は遅くなります。

不測の事態が起きた。

明日まで待ってください。

最悪の場合に備えて身を隠してください。


という意味だ。

伝言を聴いた瞬間にジョゼにいったい何がおこったのかわからず、パニックになった。思考が脳の限界をこえショートしたように意識を失ったのだ。


そうだジョゼ。ジョゼはどこにっ。

手に持った封書を開ける。


「もうあなたに仕えることはできません。私はボーセイヌ様に仕えることになりました。それでは、さようなら、お元気で、サニー。」ジョゼより


そんな・・・ジョゼがこんな、こんな手紙を出すはずがないっ。

確かめなきゃっ。


手紙を投げ捨て、サンニアはボーセイヌがいるであろう領主屋敷に向かって夢中で駆けだした。




「ボーセイヌ様。サンニアと名乗るものが面会を求めております」

「ん?そうか。オレが入ってから部屋に通せ。それと、アリフールを呼べ」

「かしこまりました。」


「サニー・・・」

「わかっていると思うが、貴様に選択権はない。これを自らつけろ。そして、お嬢様ためにオレに身を捧げろ」



「お連れしました」

「ジョゼはどこなのっ!?」

「落ち着け、淑女らしさのかけらもないな。お前は下がっていいぞ」

「ジョゼはどこ!!」

「必死なのは結構なことだが、貴様は手紙を読んだだろう?あれがすべてだ」

「ジョゼがそんなこと言うはずないっ」

「クックック、なら本人にでも聞いてみるがいい。おい、ジョゼを呼べ」



「お呼びときき参りました」

「ジョゼっ!」

駆け寄るサンニアに首を掲げながら答えるジョゼ。

「?私をご存じの様子ですが、申し訳ありません。私にはあなたが誰か存じあげません」


「ジョゼ?何を言っているの?私よ?サンニアよ?」

「申し訳ありません」

「なにをいっているのじょ」

「ん~ぅどうした?貴様のことなどジョゼは知らないと言っているぞ?」

ニヤニヤ

ボーセイヌの表情はいかにも愉快そうだ。

「!!!ジョゼになにをしたのっ!!」

「なんのことだぁ?言いがかりはいかんなぁそうだろうジョゼ?」

「ごもっともです。ボーセイヌ様」

とうやうやしく頭を下げる。

「くっ、ジョゼは、ジョゼを返してっ」

「私はあなた様のことを存じ上げておりませんので、その、返すも何もないのですが・・・」


「じょ、ぜ」

あまりにも他人行儀なジョゼに言葉が続かない。

「おっと、そうだそうだ、貴様、あー、サンニアといったか?貴様に用があるいう男がいてな、合わせてやる。連れてこい」


思考がぐちゃぐちゃになって何を言っているのか理解できない。


呼ばれてはいってきた男は開口一番に怒鳴った

「ボーセイヌ様。窃盗罪とはなにごとですかっ!!」

「おぉ、お冠だな。ちょっとした手違いだ」

「手違いですむと仰せですか!!!」

「あぁ思っている。だが、さすがにそれだけでは貴様も納得できんだろうとおもってな、オレの余興を楽しませてやろう。」

「余興?ですか」

やっと落ち着いた男は、ボーセイヌが顎で示す先にいる人物にようやく気付いた。

「サンニアお嬢様」

思わず呟いてしまった男は失態を悟った。

名前を呼ばれたほうに向けた顔は驚愕に染まる。

「ミショル・・・なぜここに」

「あ、いえ、その」

「フハハハっ!どうした知り合いか。ジョゼはこいつを知っているか?」

「はい。取り巻きの一人です」

「ほう?どいつのだ」

「商会長です」

「クックッ!なんだそれは、父親にすらうとまれていたのかっ。こいつが貴様を殺してほしいと150枚もの金貨をオレに渡してきたぞ。なんだ、なんて愉快な話だ」

「そ、ん、な」

度重なるストレスに目の前が真っ暗になって、膝から崩れ落ちるサンニア。

「ん?どうした。さっきまでの威勢が嘘のようじゃないか?これではせっかく従属の首輪まで使ったかいがないではないか」

「じゅうぞくのくびわ?」

「ん?知らないのか。そうだな、哀れな貴様のために教えてやろうか。これはな、付けた対象の精神を強制的に奪い、従せることのできる逸品だ。支配のブレスレッドなどとは比べ物にもならんぞ。」

「!?」

「おっ、さすがに気づいたか?その通りだ。貴様のことだけを知らないからくりはそういことだ」

「なん、で、そんな、ことを」

絞り出すようにサンニアいった

「聴きたいのか?そうだな、教えてやる。ジョゼは貴様を守るためにこれをつけた。弱い貴様を守るために、オレに手を出さないでくださいと地べたにはいつくばって懇願してきてな。ククッ、だからな、ジョゼがオレのものなるなら見逃してやらんでもないと提案してやっただけだ。まあ効果は騙してつけさせたんだがな」


「っ!!」

怒りで我を忘れてオレに掴みかかろうとしたサンニアをジョゼが止める。


「ジョゼっ、はなして、こいつだけはこいつだけはっ」

「ボーセイヌ様には一切触れさせないっ」

サンニアを突き飛ばす。


「っぅ、じょ、じょぜ、どうして、どうして。。。」

「クハハハハハ。愉快、愉快だぞ。どうだ、姉のように慕っていたジョゼに忘れ去られた気分は?実の父親に疎まれた事実をしった気分は?這いつくばっているのが貴様にはお似合いだ」


下っ端の男はボーセイヌの勢いと同じ人とは思えぬ、あまりの悪逆さに腰が引ける


「あぁあよいぞ、十分に楽しんだ。そろそろ、終わりにしようか。ジョゼ、ここに立て」

ボーセイヌの背後に立つジョゼ。

「おっとそうだ、サンニアといったか?よく見ておけ、貴様の侍女の最後だ」

と振り返り、懐からナイフを取り出し、腹に突き刺す。

「!」 目を見開くサンニア。 

「ひっ!!」 後ろに腰がひけて倒れる下っ端。

「ジョゼーーーーっ」

刺された箇所からみるみるうちに広がる血痕。

「ぐぅ」

「あぁ、貴様が不甲斐ないばかりにジョゼが死んでしまうな」

「ジョゼ」叫びながら駆け寄ろうするサンニアをアリフールが止める

「じょぜ! しかっりしてじょぜ! じょぜっ」

「うるさいな、興ざめだ」

そのまま、二回、三回とジョゼの腹にナイフを突き立てる。

「ぐぅうっ  ぅぅ  がはっ  お、じょ、   さ、n」

口から血を「!?」ながし、倒れる落ちるジョゼ。


「じょぜーーーーーーーーーっ」 っ「!?まずいっ」

サンニアの周りに急速に魔力が集まり始めた。

うっすらとヤミューがみえる。

「アリフール!!」


アリフールは素早くサンニアを気絶させる。


「くくく、どうだった余興は?おもしろいだろう?」

腰をついたままコクコクと縦にふるだけの頭。

「おっと、死ぬ前に回復薬をかけないとな。こいつは生意気だったからな。目覚めてお嬢様が殺されていると知った時のこいつ顔が楽しみだ」

視線を気絶したサンニアにむける


「さてと、あちらも始末をつけるか」


腰からうしろに倒れた姿勢の下っ端には理解できなかった。


サンニアに馬乗りになってナイフを掲げた背中に。

淡々と ドスッ 作業のように ドスッ ボーセイヌが ドスッ サンニアに何度も、何度もナイフを突き立てた姿に。


あまりに無表情に行われる所業に、下っ端は心の底から恐怖した。


座った姿勢から見えるサンニアは血まみれだ。どうみても死んでいる。いやあそこまで刺す必要なんてなかったはずのに・・・・。


飽きたのかすくっと立ち上がり、

「これでいいな?」と手は血にまみれ、滴る液体は床を染め上げながら、

生々しい赤を顔つけたボーセイヌがこちらを向いた。


「ひッ。は、はいツ それでいいですッ」

「お帰りはあちらだ、いけ。あー、それと二度とオレの前に現れるなと雇い主に伝えておけ。こんな事故が、起きてはいけないからなぁ?」


狂気に満ちた笑顔にみえた。

脱兎のごとく駆け出した下っ端。


「マリーエッタを呼べ、片付けさせる」







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