第15話黒幕ってくろいよね2
客間の扉のさきには、こちらを射抜く視線の侍女がいた。
「昼間ぶりだな」
「なんの御用でしょうか?ボーセイヌ様」
「ほう、オレを知っているのか」
「それはもう、悪逆非道な人物であると聞き及んでおります」
「貴様、いうではないか。お嬢様がどうなってもいいのか?」
「!?サニーに手を出してみろ、必ず殺してやる」
「おぅおぅ怖いね。手はださないさ。オレは、な?」
「それはどういうっ」
「いやなに、あのあと貴様たちとゆかりの深いものから依頼を受けてな?おい、持ってこい」
「失礼します」とマリーエッタがワゴンに乗せた袋を2つ持ってきた。
「見てみろ」
「これは・・・」
「金貨にして150枚。これが貴様たちの値段だ。生死は問わん。亡き者にしてくれだとよ」
「くっ、どちらからこれをもらったっ」
「さぁな。オレにはどちらでも構わん。金は、金だ」
「・・・これを私に見せてどうするつもり」
「本題に入れるな。これは忠告だが、この先も同じようなことがお嬢様が死ぬまで続くぞ」
「!」
「わかっていただろうが、これが現実だ」
「さて、幾分か冷静になったか?取引と行こうじゃないか」
「取引?」
「そうだ。取引だ。お嬢様には消えてもらう」
「!」隠し持ったナイフを取り出そ「!?」侍女の首筋にはアリフールの剣が添えられていた。
「今ので貴様は死んでいたぞ。オレがやさしくてよかったな」
「サニーに手は出させない」
「その恰好で良く吠える。だが言っただろう。オレは手を出さない、と。今のように貴様より強いやつはいくらでもいる。そのとき、貴様に彼女を守れるのか?」
「・・・」
「沈黙は肯定と取るぞ。そうだ、守れない。だ。わかったか?それが貴様たちの立ち位置だ。まぁ、いじめたいわけじゃぁない。単刀直入にいこう。お前たちには世間的に死んでもらう。」
「!なにをい」
「まあ聴け。今のままでは、遅かれ、早かれ、殺されるかもっとつらい運命しかない。そこで、だ。ここらで、死んだ。殺されたことにしてみてはどうだ?」
「死んだことに?」
「そうだ。そうすれば、後継者争いなんてものに殺されることもない。芝居だな。悪い話でもないだろう?」
「そう、かもしれないが、そちらに何のメリットがある?」
「メリット、か。そうだなぁ、貴様だ」
「私?」
「そうだ、貴様はオレの手足になってもらおうか」
「!!下種がっ」
「くっくっく、いいんだぞ、断ってもらっても。大いにあがくがいいさ。どうせ碌でもない未来しかお嬢様にはまっていないんだからな」
「・・・・・・・わかった。お嬢様は自由なんだな?」
「それなんだが、昼間の男女を覚えているか?」
「あの二人がなにか?」
「あれでいてな、強い。まだまだ強くなるぞ。そして、なによりお人好しだ。あれに任せてみないか?まぁこれは提案だがな」
「たしかに、悪い人間でないのも、強いこともわかる、けど。」
「ためらうのはムリもないが、どこの誰ともわからない輩や、貴様たちのゆかりの者たちともつながっていないのは明白だ。どうだ?」
「頼れるなら任せたいが、できるのか?」
「まかせろ、こちらにも事情があってな、一芝居うつぞ」
宿を訪れたセギーリンは受付にて、伝言を届けようしていた。
そのときちょうど、ジョゼが遅いことを不審に思い部屋から出てきたサンニアに気付く。
「サンニア様。こちらのかたが、伝言があるとのことです」
受付の前には巡回兵と思われる、見知らぬ男がいた。
「あなたは?」
「はじめまして、巡回兵が一人、セギーリンと申します。こちらにはあなたの侍女さんからの伝言を頼まれましたので訪れました」
「ジョゼから?なにかしら。」一抹の不安が胸に浮かぶ。
「今日は遅くなります。明日まで待って下さい。とのことです」
「!??ジョゼはジョゼはどこにっ」
「??連行しろと命令がありましたので、領主屋敷かとおもいますが」
「そん、なっ、うっ」
昼間の怪我の具合が悪いのか頭を押さえてうずくまり、そのまま意識を失った。
「えっ、ちょ、ちょっと大丈夫ですか?」慌てるセギーリン。
「え、えっ、と、とにかく部屋で横になってもらいましょう」
セギーリンは女性を担ぎ上げて、受付の案内に従って彼女たちの部屋のベットに寝かせた。
「ふー、驚いた。やはり昼間の怪我がよくなかったのと、さっきの動転でぶりかえしたのかな」
「昼間の怪我とは?」
「ん、あー、と昼間の職務中にね、あそこの悪党どもに絡まれている彼女たちを見つけて、そのとき、彼女は壁に寄りかかって気絶していたから、たぶんそのときのかなって」
「そうなんですね。 あ、そういえばなにかあったらここに連絡してくれってお連れのかたがいってました」
「お連れのかた?っていうと旅人風で男女2人組の?」
「そうです。その2人組です」
「あーじゃぁ俺がその2人に伝えてくるよ。昼間にもあってるから。」
「そうなんですか?それではお願いしても?」
「ええ、任せてください」
セギーリンは受付に教えてもらった宿へと駆けて行った。
「昼間はどうも」
「あっ巡回兵さん!たしか、セギーリンさんでしたっけ?」
「そうです。昼間は不甲斐ないところをお見せしました」
「いえ、勇敢だったと思います」
「そんな、。」
「ところで、どうしてここに?」
「あっ、そうでした。昼間のお連れの女性が倒れられまして、それで、なにかあったら教えてくれと、受付のかたに聴きまして、その彼女とちょうど伝言があって対面していたので、代わりにきました」
「たおれた!?サンニアは大丈夫なんですかっ」
「大丈夫かはわかりませんが、ひとまず宿のベットに寝かせました」
「そうなんですか、ありがとうございます」
「いえいえ、それではわたしは職務がありますので、これで」
去っていくセギーリンを見送る。
「ねぇ、わたし彼女をみてくる」
アーシャならそういうと思っていた。
「そうだね、僕も一緒にいくよ。昼間のこともあるから」
「そうね」
夕暮れがすぎ、明かりがともり始めた街中を、サンニアたちが泊まっている宿へと足早に向かった。
宿に着き、サンニアたちが止まる部屋に入る。
「まだ、ねむってるみたいね」
「そうだね」
「いまのうちに体に異常があるかもしれないから、みてみる」
「うん、僕は外で待っているから、終わったら声を掛けて」
部屋をでて、扉の前で待った。
「少しよろしいですか?」
声のほうをみると、受付の女性がいた。
「はい、どうしました」
「さきほど、こちらが届きまして。サンニア様宛でございます」
「わかりました。渡しておきます」
受け取り、裏を確認する。ジョゼと書かれていた。
そういえば、こんなときにジョゼさんはどこにいったんだ?
この手紙は一体?
「もういいわよ」
中に入ると、アーシャはベットの端に腰かけて、サンニアを見守っていた。
「大丈夫みたい。起きるまで待ちましょう。それより、それは?」
「ジョゼさんからみたいだ。手紙だとおもうが中身はわからない」
「そう、ジョゼさんどこいったのかしら」
結局、ジョゼは帰ってこない。サンニアも朝まで目覚めることはなかった。
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