第27話 もしかしてギャルってかわいい?

 なんてな!無論犯そうとも考えてなければ邪な気持ちすらない。しかしこうすることで相手も危機感を感じざるを得ない。

 どうせ、弱そうな男ばかりとっ捕まえて遊んできたんだろうから、こういう仕返しもされたことがないんだろ?

 男は所詮性欲のオバケみたいなやつばかりだ。加えて俺も男だったりする。襲ってやってもよかったが、なごみを泊めてくれた恩に免じてもう少しいたぶったら終わりにする。


「ごめんね!そういうつもりはなかったの!」

「誰も来ませんよ」

「待って!なごみちゃんもいるじゃない!正気に戻って、お願い!」

「静かにし


 ヤバい!しまった、慣れないことをしたら声が裏返った……。

 実を言うと、襲わなかったのもそんな度胸がなかっただけで、襲えなかったの間違いだったりする。実は「ごめんなさい、もう我慢できません」の「ごめん」の時点で既に動揺で心臓が鳴り止まなかった。


 今まで焦り顔で赤らめていた沙那さんがみるみる真顔に変化していく。


「ねぇ」

「は、!」


 はぁぁー、もうダメだぁー。これじゃあまるで『僕動揺してますよ』って自己紹介をしてるみたいじゃないか。自分では分からなかったがこの時の俺は相当焦った表情をしていた。額からは次から次へと汗が吹き出してくる。

 沙那さんは真顔をそのまま維持し続けた状態で徐に口を開ける。


「なごみ。お前が輝──」

「──なぁぁぁぁ!!!」


 俺が破壊光線を放つ時並の大きな口で叫ぶと、俺の下で仰向けになっていた沙那さんが馬乗りしている俺の口を抑える。


「んんんんーんんん!(何するんですか!)」

「こんな深夜に騒がないでよ!」

「んんーんんん……(ごめんなさい……)」


 気付けば立場は逆転して俺に沙那さんが跨っていた。その状態を認識した沙那さんはニタァーとした顔つきで俺の耳元に囁いた。


「私の為に慣れないことしたでしょ」


 俺は一瞬にして顔を赤くした。なごみのことだけじゃなく俺の内面まで分かってしまうのか。確かに、邪な気持ちがあった訳でもないし、怒りを衝動に押し倒した訳でもない。

 しかし、なぜ俺が気を張ってまで沙那さんに反逆し押し倒したかは分からない。となると多分沙那さんがギャルであるという事実が気に入らなかったのだろう。

 ギャルが嫌いという話は本当である。だから一旦深々と深呼吸をし、冷静になった後で話し始めた。


「沙那さんの為とかそういうわけではないです。ただ単にギャルが嫌いなんでやりました」


 俺の耳元に近づけた顔を上げて俺と目を合わると、いかにもギャルっぽい元気ハツラツとした笑顔で言う。


「ありがと!」

「あの、お礼言われるようなこと一つもしてないんですけど」

「あ、そうだそうだひとつ言いたい事があったんだった」


 もう当たり前のように尽く俺の話を無視していくが、そういう生意気だと思わせる所も押し倒される原因に繋がっていた気がする。まあ、いいけど。


「何ですか?」

「さっきの続きなんだけどね」

「え、続き……」


 俺の上から降りると体育座りをしながら店の壁にもたれかかる。俺もその隣に体操座りで座る。


「あの時私が背水の陣だねって言ったでしょ?」

「はい」

「実はあの時なごみちゃんも小さな声で言ってたんだよねー」

「何って言ってたんですか?」

「『ふふっ』ってね」

「何ですかそれ」

「馬鹿にしてたのか呆れてたのかは分からないけど」


 なんで例えが二つともネガティブなんだよ。純粋に笑ってたとか微笑んでたとかでいいじゃないですか!


「なごみちゃんのこと心配してるんじゃないかなって」

「……はい、図星ですね」

「どうせ怒って返事してくれないとでも思ってるんじゃないかなと思って。別になごみちゃん、怒ってる訳じゃなさそうだよって言いに来たの……なのに!私を襲った君はどう言い訳をするのかな?」


 これは本当にごめんなさいの一言に尽きるが、断る!さっきから謝ってばかりじゃないか!何とかして言い訳を考えてでも、俺の正しさを証明しなければならない。


「謝りませんよ。沙那さんだって襲われてる時、満更でもない顔してたでしょ」

「は、はぁ!?んなわけないでしょ!」


 顔を赤らめながらスっと立ち上がるとプンスカプンスカと怒りながら家の中へと戻っていく。

 俺の毛嫌いしていたギャルとは一見してまあまあかわいい反応を見せた。まさか男慣れしてないのか?だとすると俺はただ単に女性に発情したお猿さんってことか!?


 ん?待てよ?結局俺……入れてもらえないの!?

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